教養・歴史書評

反知性主義横行の時代に投げかける実証研究=井上寿一

 戦後進歩派知識人の代表と称される丸山眞男の日本政治思想史研究は、今日ではさまざまに批判されている。丸山の名を世に知らしめた諸論考を収録する、丸山眞男『超国家主義の論理と心理 他八篇』(岩波文庫、1380円)のなかでも、とくに標題の論考は、同時代における圧倒的な影響力と対照的に、問題点が指摘されている。たとえば日独の「超国家主義」の違いを「主体的責任意識」の有無に求める論理展開は、ドイツのファシズム研究の進展によって、説得力を失っている。

 丸山の研究をめぐるこのような状況に抗して、「その思想を批判的に継承することを試み」たのが清水靖久『丸山真男と戦後民主主義』(北海道大学出版会、2900円)である。

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