経済・企業がんが治る 見つかる

「夢」のがん診断術 血液 東芝、一度に13種類を網羅=下桐実雅子/加藤結花

    がんの種類判別は今後の課題(マイクロRNAチップを持つ東芝の橋本幸二研究主幹)
    がんの種類判別は今後の課題(マイクロRNAチップを持つ東芝の橋本幸二研究主幹)

     がんは早期に見つけると、生存率が高い。最近のデータによると、日本人に多い胃がんでは、進行した状態(ステージ4)で見つかると5年後の生存率はわずか9%だが、早期のがん(ステージ1)だと約95%にまで上昇する。だが、国が効果を認めているがん検診(胃、大腸、肺、乳房、子宮頸(けい)部)の受診率は、4割程度と先進国の中でも低い。内視鏡検査やマンモグラフィーなどは負担が大きいし、国の調査では「受ける時間がない」ことを理由に挙げる人が多い。血液、尿、唾液などによる検査は、こうした状況を打破することが期待される。

     国が約80億円を投じて、血液1滴でがんを早期発見しようという研究開発プロジェクトが2014〜18年の5年間で進められた。血液中に含まれる「マイクロRNA」という物質に着目した国立がん研究センターの研究成果をベースにしたもので、同センターを中心に、大学や研究機関、企業が参加した。その1社が東芝だ。

     マイクロRNAは、人から約2500種類見つかっており、たんぱく質の合成を制御するなど、体内で重要な役割を果たす。がんの人は血液中の特定のマイクロRNAの量が増えたり減ったりする。がん細胞から血液中に分泌されていると考えられており、マイクロRNAの種類や量を精度よく調べられれば、がんかどうかの判定が可能になる。

     東芝は、がんに関係するマイクロRNAを調べる独自技術を開発。子宮頸がんの原因ウイルスを識別する検査技術を応用した。まずは、採取した血液からマイクロRNAを抽出し、がんに関係するマイクロRNAを検出するための前処理をする。検査装置に入れて、流れる電流が多いか少ないかによってマイクロRNAの量を測定する仕組みだ。電気を使うことで、装置の小型化、測定時間の短縮ができた。

     実際、数百人のサンプルで調べてみたところ、がんの人とそうでない人を高精度で区別できたという。早期がんも含めて、肺、乳房、膵臓(すいぞう)、食道、前立腺、肝臓、胆道など13種類のがんの人と健康な人を網羅的に調べた結果だ。

    東レは膵臓、胆道

     ただし、がんの種類を判別するには至っていない。東芝研究開発センターの橋本幸二研究主幹は「今後の研究課題」と話す。このため、現状では、がんの可能性を指摘されても、どのがんかはわからない。「陽性と判定された人には、PET(陽電子放射断層撮影)などの画像診断を受けてもらうことになるが、高額だし、超早期だとPET検査でも見つからない場合もある」と橋本さん。20年から東京医科大学などと共同で実証実験を行う予定で、これらを踏まえて検査を受けた人への伝え方も検討する。健診や人間ドックなどの場で、数年後の実用化を目指しており、費用は2万円程度を見込む。

     一方、同様にプロジェクトに参加した東レは、診断用医薬品として国の承認を得ることを目指している。膵臓がんと胆道がんの2種類が対象で、ともに治療が難しいがんだ。19年4月、優先的に承認審査を行う国の制度の対象に指定され、診断の補助に使われる見通しだ。20年中には国に承認申請するとみられている。

    (下桐実雅子/加藤結花・編集部)

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