教養・歴史書評

『リベラル・デモクラシーの現在 「ネオリベラル」と「イリベラル」のはざまで』 評者・高橋克秀

     樋口陽一氏の『比較のなかの日本国憲法』(1979年)は、日本国憲法が占領軍に「押し付けられた」憲法などではなく、世界史的に見れば人権思想を核とした人類の普遍的価値の嫡流であることを説いた名著である。憲法思想の王道を説く樋口氏の学説は、戦前の日本を美化する復古主義に対する知的解毒剤として有効に働いてきたといえるだろう。良識ある保守派の中でもそれは共通の了解事項になっていた。

     それから40年。憲法をめぐる政治も国民の意識も大きく変化した状況で本書は生まれた。憲法改正を唱える首相が言論の自由に介入し、立憲主義を破壊する一方で、スキャンダルまみれのその内閣の支持率が40%台を維持する奇観。著者は安倍政治とは「論理の整合性を軽んじ、感覚と情意に訴えて敵味方を切り分ける政治手法」によるポピュリズムであるとみなす。そのうえで「知識人と社会そのものの雰囲気との間のへだたり、それこ…

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