美術 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン=石川健次
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画家の発想源となった子ども 色彩の“素朴で強い力”
可憐(かれん)で無垢(むく)で、ともかく可愛い。図版に挙げた作品だ。描かれている少女は、このとき3歳。描いたのは画家である父親だ。子どもを思う父の気持ちがあふれている。少女の名はノエル。画家の長女だ。ノエルが生まれる前、画家は長男のジャン=ポールを生後4カ月で失う悲しい経験をしている。ノエルの誕生と成長は、なおのこと大きな喜びだっただろう。
宗教画に見られる幼子キリストなどを除いて、西洋美術の歴史のなかで子どもが絵画の主役になることはあまりなかった。だが19世紀末ごろには、フランスを中心に子どもは単なる脇役やアクセントではなく、中心的なテーマとなった。ファン・ゴッホら近代の画家、なかでもピエール・ボナールやモーリス・ドニなどナビ派の画家にとって、子どもはインスピレーションの源泉ともなる重要な主題だった。
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週刊エコノミスト
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