「コロナ」好機に伸びる17銘柄=和島英樹
コロナショックで業績が悪化する企業ばかりではない。「ウィズ・コロナ」「アフター・コロナ」で需要を取り込んでいる企業もある。その一例がネット通販を裏方として支えているダイフクだ。物流システム・自動倉庫の世界トップメーカーで、新型コロナウイルスの影響が出る前から拡大基調だったが、直近では通販会社向けの自動倉庫や自動ピッキングシステムなどへの引き合いが活発化している。
食品や飲料業界向けが伸びているほか、半導体もテレワークの定着で5G(第5世代移動通信システム)の普及やデータセンター向けの需要が伸びてくると予想しており、2021年3月期は増収増益を見込んでいる。期末の受注残高は3979億円(前年比11%増)と過去最高を更新。株価も18年1月の過去最高値を突破している。
在宅で伸びるイビデン
テレワークなど在宅勤務の定着は、関連部材にも効果がおよんでいる。驚きの好決算を発表したのがICパッケージに強みがあるイビデンだ。
ICパッケージとは半導体素子や集積回路(IC)を包み込んで周囲から防護し、外部と電力や電気信号の入出力を行うための接点(端子や配線)を提供する包装部材。クラウド化などデータ処理量の増加を背景に、ICパッケージ基板がデータセンターで使われるサーバー向けに拡大した。20年3月期の営業利益は前年比94%増の197億円。会社計画を約27億円上回った。今期の営業利益も前期比37%増の270億円を計画している。中期的にも半導体市場では5G、ICT(情報通信技術)の進展によるデータセンター市場の拡大や、車載用の画像解析など企業活動を中心にデジタル化やクラウド化が加速し、高機能ICパッケージの需要拡大と仕様の複雑化が見込まれる。こうした状況を受けて、同社ではサーバー、画像処理などを中心とした顧客需要に対応するため、ICパッケージ基板の生産設備の能力増強や次世代投資に600億円を投じると発表した。
類似企業の新光電気工業も、前期は後半以降に急激に利益が回復してきている。
小売りではニトリホールディングスの強さが際立つ。
ニトリは34期増益
ニトリは家具・インテリアの製造小売り(SPA)チェーンを展開。海外に自社工場を有している。設計から商品投入まで機動的に行うことができ、コロナ下でも勝ち組だ。21年2月期は売上高6532億円(前期比2%増)、経常利益は1122億円(同4%増)を計画している。今期で34期連続の増収増益となる。
ニトリの前期実績は会社計画を超過しており、業績予想は堅めな数字を出す傾向がある。新型コロナの影響については上期まで客数の減少などを織り込んでいる。ネット販売の拡大やネットと実店舗の連携での売り上げ増を見込む。ネット上では同社製品は品不足気味だ。
百貨店やコンビニが苦戦を強いられるなか、ドラッグストアの好調も目立つ。マスクや除菌製品の伸びもあるが、飲料や食品の値ごろ感も評価されている。
業界最大手級のウエルシアホールディングスは21年2月期も営業利益で連続の過去最高益を見込む。同社は調剤薬局の併設や24時間営業店の拡大で伸びている。新型コロナの感染拡大で4月以降オンライン調剤が急拡大。オンライン診療で医師が処方箋を調剤薬局にメールなどで送付。患者は服薬指導を受けつつ薬を送ってもらえる。あらたなニーズをとらえつつ成長を続ける。
DCMホールディングスやコメリなどホームセンター大手は、自宅での日曜大工需要を取り込み、利益を伸ばしている企業が少なくない。また、人との接触を避ける「新しい生活様式」では非対面の営業を支援するブリッジインターナショナル、チャット会議システムのChatworkの業績が堅調だ。
新型コロナウイルスの影響は大きく、20年3月期の決算発表が当初予想から延期または未定となった企業は600社以上に達し、約6割が21年3月期の業績予想を開示していない。今期についても、コロナ影響の収束について、経営トップが見通せないことが要因だ。そうしたなかで増益を維持できる企業や、ピンチがチャンスになる企業は数は少ないが、探せば見つけることができる。こうした企業は株価面でも評価される公算が大きい。今こそ、選別物色を心掛ける局面といえる。
(和島英樹・経済ジャーナリスト)