新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

「神経」のような繊細さが描く「草の刃」の短編集=楊逸

×月×日

春らんまん。花草がいくらきれいに咲き誇っていても、例年のように楽しめないのはつらい。コロナ疲れで、何をする気も起きないが……。

 しかし時間は決して経過することを怠ったりしてくれない。まるで「破壊を糧に蔓延(はびこ)る、無数の草の刃」のようではないか。

『草地は緑に輝いて』(アンナ・カヴァン著、安野玲訳、文遊社、2500円)のそんな帯文を目にしてふと思うのだった。さっそく「本邦初訳」のこの「傑作短編集」を手にとって読み始める。

「塔の形は澄んだ光のなかでどれも硬く鋭かった。巨大な建造物のひとつひとつが、きれいに晴れわたった空を背景に艶やかな金属の氷めいた鋭さで屹立している。おまけに、とてつもない数の透けるように白っぽい垂直な塔は恐ろしいほどに凄みがあって、容赦ない強烈な日射しのなかで、この世のものとも思えない神秘的な雰囲気を醸し出していた」

残り928文字(全文1305文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事