教養・歴史書評

暴君ネロに仕えた人物が「怒り」の処し方を語る=孫崎享

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 私は国際政治を学ぶのに最良の書は、ジョセフ・S・ナイ・ジュニアとデイヴィッド・A・ウェルチの『国際紛争』だと思っている。本書は「国家の行動で、20世紀の学者が知っていることで、ギリシャ人が知らなかったことがあるか」と記述して、ギリシャ古典の重要性を指摘した。それはローマ時代の古典にも通ずる。セネカは後世の欧州思想史に大きい影響を与えている。だから私たちは本来ギリシャやローマの古典に親しんでいいのだが、どうも敷居が高い。セネカにしても『セネカ哲学全集』に倫理論集、 自然論集、倫理書簡集となるとちょっと手が出ない。

 そうした中、手頃な本が出た。セネカ著、ジェイムズ・ロム編『2000年前からローマの哲人は知っていた 怒らない方法』(文響社、1280円)である。私がこの本を買ったのを知って、妻に「あなたでも怒るのがまずいと思っているんですか」と半ば嘲笑された。

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