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オンライン教育 小中900万人にパソコン 「エデュテック」に追い風=稲留正英

(出所)各社ホームページなどから編集部作成
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 コロナ禍を受け、日本に巨大な「オンライン教育」市場が誕生する。学校閉鎖で登校できない場合に備え、2021年3月末までに、全国の小中学生900万人に1人1台、パソコンやタブレット端末が配布される。学習における情報端末の活用や関連産業の整備が一気に進む可能性がある。

 この動きは、19年10月の消費増税を受けた政府の総合経済対策の一環として、文部科学省が同12月に打ち出した「GIGAスクール構想」に沿ったものだ。来るべきデジタル社会に備え、全国の小中学校に高速の無線LAN回線を整備するとともに、全生徒に情報端末を配り、個人個人に最適化した教育を施すのが狙いだ。今年1月30日に成立した令和元(19)年度補正予算では2318億円が計上され、校内LANの整備と、令和5(23)年度までに、全生徒へ端末が配布されることになった。

 ところが、コロナ禍で安倍晋三首相が2月27日、全国の学校に休校を要請、生徒が登校できなくなったため、官邸と自民党が「GIGAスクール構想」の家庭での「遠隔学習」機能に改めて着目した。令和元年度補正予算では、端末配布は小学5、6年と中学1年だけだったが、6月12日に成立した令和2(20)年度第2次補正では2292億円を追加計上し、小学1〜4年と中学2、3年についても、来年3月末までに前倒しで端末を配布することになった。

 こうした環境は、「EduTech(エデュテック)」と呼ばれるITを使った教育サービスを提供する企業に強い追い風となっている。

休校要請で利用者10倍に

 AI(人工知能)を搭載した個別学習教材を、学習塾や小中高校に提供する「すららネット」は、安倍首相の休校要請会見翌日の2月28日から全国の学校に、同社のAI教材を利用するためのID(身分証明)の無償配布を開始した。同社の有料ID数は3月末で7万IDだが、突然の休校で対応に苦慮した学校の申し込みが相次ぎ、無償IDの配布は全国369校の15万IDに達した。無償提供は5月6日で終了したが、同社は、コロナ禍の終息が見えない中、一定数の学校が有料サービスに切り替えると予想する。株式市場では同社の業績拡大を予想し、株価は6月30日に4590円と株式分割後の高値を更新した。

「ユーザー数が1カ月で10倍以上伸びた」と話すのは、「atama plus(アタマプラス)」の稲田大輔社長だ。同社は17年4月に創業した新興エデュテック企業で、駿台予備校やZ会など全国の学習塾・予備校にAIを搭載した学習教材を提供している。2月末の安倍首相の休校要請で、学習塾・予備校も休校となったため、家庭での学習ニーズが急激に増えたという。同社のAI教材は、現在、全国上位100の学習塾・予備校の3割強、計1800教室以上が導入した。

 野村総合研究所の隈部大地コンサルタントは、「昨年段階で、国内エデュテック市場の規模を23年に3000億円と予測していた。だが、今回のコロナ禍で、塾や学校のニーズが非常に高まっており、今後、非連続な成長が起こる可能性がある」という。

(稲留正英・編集部)

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