教養・歴史アートな時間

映画 #ハンド全力 「スポ根」でネット社会風刺 偽物と決別する若者さわやかに描く=勝田友巳

(C)2020 「#ハンド全力」製作委員会
(C)2020 「#ハンド全力」製作委員会

 ◆#ハンド全力(ハッシュタグ ハンド ゼンリョク)

 ハンドボール部の高校生が主人公の青春映画。なんだその手の話か、掃いて捨てるほどある、もう食傷なんて言うなかれ。ハンドボールにSNS、熊本地震を加えた三題噺(ばなし)。意外な取り合わせを、巧みにさばいてひねりを利かせ、みずみずしい佳作となった。

 熊本の高校生マサオ(加藤清史郎)は、やりたいことが見つからず進路も決まらない。友だちの岡本(醍醐虎汰朗(だいごこたろう))とつるんでスマホをにらむ毎日だ。ある時ハンドボールをしていた中学時代の写真に岡本がコメントを付け、インスタグラムにアップすると、震災復興と結びつけられて、たちまち「イイね!」が増えてゆく。調子に乗った2人はインスタ映えする写真を作って「#ハンド全力」のハッシュタグと共に投稿を続け、時の人となった。メディアの注目も集まり、全国に復興支援の輪が広がってゆく。

 とくれば感動的な話のようだが、実はマサオも岡本もハンドボールをやる気なんかない。一応ハンドボール部に入るけれど、練習なんかそっちのけ。インスタ映えする写真撮影に熱中する。試合で大敗しても意に介さない。一方ネット民も、背景に写っていた復興住宅と見栄えのする写真から、被災地でスポーツに打ち込む高校生という感動物語を勝手に作り出してチヤホヤする。

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