映画 ぶあいそうな手紙 漂流者の情感を炙(あぶ)り出す映画 平凡な玄関の先に隠し部屋が=芝山幹郎
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独り暮らしの老人が、気まぐれでエゴの強そうな若い娘と出会う。谷崎潤一郎の書いた「瘋癲(ふうてん)老人日記」やピーター・オトゥール主演の「ヴィーナス」(2007年)を思い出すまでもなく、この設定は小説でも映画でも珍しくない。
ただし、「ぶあいそうな手紙」(19年)は微妙に匂いが異なる。独居老人の性や経済の問題に接近するかに見せながら、巧みにステアリングを切り、意外な場所へと観客を連れていくのだ。
そもそも、ロケーションが考えられている。ブラジル最南部のポルトアレグレ。サッカーチームのグレミオが本拠地としている都市だが、ウルグアイやアルゼンチンの国境に近く、ウルグアイの首都モンテビデオまでは約700キロ。逆に、ブラジル南部の大都市サンパウロとは、850キロ以上も離れている。
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週刊エコノミスト
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