中東の新たな火種 イスラエルとUAE 国交正常化は米国の悪夢=福富満久
有料記事
トランプ米大統領が仲介したイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化が8月13日に実現した。トランプ大統領は誰にもまねできないことだ、と自身の外交手腕を自画自賛した。11月に迫る米大統領選再選に向けて弾みとしたい考えだ。
だが、今回のUAEとイスラエルの国交正常化は、簡単に歓迎できない大きな問題をはらんでいる。中東の歴史はパレスチナを支配したイスラエルに対してアラブ諸国とイランが連合して挑んできた戦争の歴史に他ならない。パレスチナを同胞と考える多くのイスラム諸国からすれば、UAEの行為は裏切りに他ならず、和平どころか混乱を招く恐れがある。
実際1978年にカーター米大統領(当時)が仲介してエジプトとイスラエルが和平合意を結んだ時、その後エジプトは孤立を招き、和平条約を結んだサダト大統領(同)は暗殺されてしまった。衝撃は周囲にも広がって、西では米国のやり方に反発したリビア・カダフィ大佐が米国人を敵視してテロを開始、東ではイランで長年米国の言いなりだった国王(シャー)を民衆が放逐、イスラム革命がイランを席巻した。
残り609文字(全文1075文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める