映画 シリアにて 室内の緊迫感だけで描き切る 戦闘場面無き戦争映画=勝田友巳
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内戦状態のシリア、首都ダマスカスにあるアパートの一室が舞台。といっても、映画の中ではいつともどことも明かされず、誰と誰が戦っているのかも分からない。ただ、戦争の気配に囲まれた部屋に立てこもった人々が、暴力に侵されてゆく一日を描く。カメラはアパートから出ることなく派手な戦闘場面も無しに、戦地の緊迫感と絶望を、生々しく描き出す。
アパートの主、オーム(ヒアム・アッバス)は夫の留守を預かっている。家族は義父と子ども3人、それに家政婦のデルハン。同じ棟で被災して避難してきたハリマの一家と、たまたま居合わせたオームの娘の恋人が足止めされて、一緒に寝起きしている。ある早朝、国外脱出の手はずを整えるため家を出たハリマの夫が、建物の前で狙撃された。周囲は危険で助けに出ることもできず、オームはハリマに告げられない。
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週刊エコノミスト
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