教養・歴史アートな時間

映画 赤い闇 スターリンの冷たい大地で 実録劇の重みと報道サスペンス 史実に基づく壮大な歴史ドラマ=寺脇研

Photo by Robert Palka (c)2019 Film Produkcja All rights reserved
Photo by Robert Palka (c)2019 Film Produkcja All rights reserved

 ウクライナといえば、わたしたち昭和戦後に教育を受けた世代だと、「ソ連南西部、黒海に面した肥沃(ひよく)な穀倉地帯」が社会科・地理の知識としてすぐに浮かぶ。平成に入ってソ連崩壊後は独立国家となったが、そのイメージは変転した。

「ヨーロッパの穀倉」と称された農業や豊富な地下資源に恵まれた工業で栄えた経済が、今は見る影もなく欧州最貧国のひとつに数えられている。最近は、2014年以来のクリミア危機・ウクライナ東部紛争で、新たな緊張の火種ともなっている。

 そのウクライナで、ソ連時代にあった「ホロドモール」という残虐な事件を、わたしは知らなかった。最大推計値だと1500万人近い生命が1年ほどの間に失われた大飢饉(ききん)である。15年に日本公開されたアメリカ映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」で初めてそれに直面したときの衝撃を忘れられない。この事件により大量に生じた孤児たちがその後に辿(たど)る陰惨な運命を扱ったミステリー小説の映画化で、歴史…

残り871文字(全文1295文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事