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教養・歴史 アートな時間

美術 上田薫展 流れ落ちるジャムやはちみつ 「一瞬の再現」が放つ瑞々しさ=石川健次

上田薫(スプーンのジャム) 1974年、東京都現代美術館蔵
上田薫(スプーンのジャム) 1974年、東京都現代美術館蔵

 とってもおいしそうなジャム、それもいちごのジャムだ。スプーンから今にもこぼれ落ちそう。図版に挙げた作品だ。こんがり焼いた食パンにたっぷりのバターとこのジャムを塗ってほおばりたい。カロリーを気にして最近はすっかりご無沙汰のジャムバタートーストが思わず脳裏に浮かんだ。きっと私だけではないようにも思う。写真と見まがうばかりだが、そうではない。絵だ。

 靴や電球など静止した対象を、とりわけ図版の作品のようにスプーンですくわれたジャムやはちみつ、アイスクリームが流れ落ちるなど動きを伴う対象を、いずれも克明に描く独自の「上田流リアリズム」(本展図録から)で魅了する1928年生まれの画家、上田薫に本展は迫る。

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