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小説 高橋是清 第112話 男爵=板谷敏彦

(前号まで)

 是清と深井英五は日露戦争にかかわるすべての資金調達を終えて帰国した。熾烈(しれつ)な建艦競争の中、国家は莫大(ばくだい)な借金を抱えながら新たな予算を必要としていた。

 明治40(1907)年の5月に帰朝した是清は、長い旅の生活からは解放されたが、日本銀行副総裁兼横浜正金銀行頭取、さらに貴族院勅撰(ちょくせん)議員の役職ではなかなか休む間もなかった。

 一方で是清に同行した深井は、是清の現場で培われた現実に対する深い洞察力や決断力を目にして、自身のキャリアについて考えるところがあった。調査部的な秘書役のままでよいのか、あるいは営業活動の現場を経験すべきかである。

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