教養・歴史書評

意図的な解釈や蔑視を丹念に解体する試み=荻上チキ

 トランプとバイデンの「史上最低の大統領選挙」を尻目に、レベッカ・ソルニットによるエッセー集『それを、真(まこと)の名で呼ぶならば』(渡辺由佳里訳、岩波書店、2200円)を読んだ。発売から半年ほどが過ぎてしまったが、このタイミングで読んだことで、現実社会を見渡した際に与えられるめまいと、怒りから捻(ひね)り出された言葉とが、深く共鳴するという体験を味わうことになった。

 著者の本は、日本でも多く紹介されている。「災害時には、人々が暴動を起こす」という誤った認識のもとで、政治エリートが人々を分断・弾圧する姿を描いた『災害ユートピア』。「教え・諭す側」を独占してやまない男性性の歪みを、「マンスプレイニング」という言葉とともに喝破した『説教したがる男たち』。この2冊は大きく話題となった。社会に浸透した蔑視感情を見過ごさず丹念に解体していこうとする手さばきは、本書でも存…

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