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教養・歴史 書評

取次大手2社が物流で協業へ=永江朗

 出版取次最大手の日本出版販売(日販)とトーハンが、11月から雑誌返品業務の協業を開始する。日本の出版流通は大きな転換点を迎えた。

 これまで日販はグループ傘下の出版共同流通蓮田センター(埼玉県蓮田市)で、トーハンは同社の東京ロジスティックスセンター(埼玉県加須市)で、それぞれ雑誌返品に伴う業務を行ってきた。具体的には、書店から返品された雑誌を集め、検品し、出版社に送り返すものと出版社に代わって古紙再生業者に送るもの(大半はこちら)とに分類し、処理する。

 戦時期に出版取次を独占していた国策会社の日本出版配給(日配)を戦後に分離して生まれた日販とトーハン(旧社名は東京出版販売)は、物流システムへ積極的に投資することで契約書店の拡大を競ってきた。蓮田センターや東京ロジスティックスセンターはその象徴ともいえる設備である。しかし、1990年代後半から紙の本の市場は拡大から収縮に転じ、とりわけ雑誌は最盛期の3分の1にまで減った。影響は出版取次にも及び、鈴木書店(2001年)、栗田出版販売(15年)、太洋社(16年)と、中堅・準大手の倒産が相次いだ。

 もはや最盛期の取扱量を前提とした物流システムを維持することは、取次最大手の日販・トーハンにとっても難しくなった。両社は18年から物流協業の検討に入り、今回の雑誌返品の協業はその第1弾となる。はじめは東京ロジスティックスセンターの業量の25%を蓮田センターに移管し、その後4カ月かけて全量を蓮田センターに移すという。

 今後の焦点は、書籍の返品、そして新刊書籍・新刊雑誌の送品の協業をどうするかである。仮にすべてを協業化すると、少なくとも物流に関しては日販とトーハンが一体化することになる。両社のシェアは8割ともいわれ、統制会社・日配を想起させる。果たしてそれが読者にとって、出版文化にとっていいことなのかどうなのか、冷静に見極める必要がある。そう考えると、今回の雑誌返品協業は、ライバル社同士が手を結んだというエピソードとしてではなく、縮小経済下におけるメディア産業の問題として捉えるべきである。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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