教養・歴史書評

崩壊までの経緯で追う 憲法と政治との関わり=井上寿一

     坂野潤治『明治憲法体制の確立』(東京大学出版会)は刊行から半世紀近くを経て古典的な名著となっている。近代日本の出発点における藩閥政府の「富国強兵」と民党の「民力休養」の対立は、明治憲法の制定をとおして「富国強兵」の側に収束する。他方で議会政治における政党の地位の向上が同時進行する。本書はこのような政治過程を明治憲法体制の確立過程として描き出す。高度な史料実証に裏づけられた精緻な分析と自在な歴史解釈は、追随者を魅了し続けて今日に至る。

     追随者が追いつく前に、著者は研究対象の時間軸を、「万世一系」の天皇が支配する専制的な憲法体制が始まった1937年にまで延伸しながら、研究対象の領域も拡大する。長年の独創的な研究は、『明治憲法史』(ちくま新書、820円)によって、広範な読者にその内容が届けられることになった。

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