教養・歴史書評

「二元構造」で理解する 中国の歴史と付き合い方=加藤徹

 岡本隆司『教養としての「中国史」の読み方』(PHP研究所、1800円)は、野心的な教養書だ。中国とは何か、日本人の今までの中国理解はどこが間違っていたのかを、分かりやすく解説する。

「中国の個性をひと言でいうなら『二元構造』です」

 なぜ中国は「一つの中国」に固執するのか。なぜ強烈な「中華思想」を持つのか。なぜ「共産党一党独裁」になったのか。なぜ格差が大きいのか。なぜ中国では「産業革命」が起きなかったのか。これらの謎は、実はすべて「二元構造」で説明できるという。著者は、古代から近現代へと歴史を語りくだりつつ、中国の二元構造の由来と特徴を説く。

 中国の地理的特性は「中華」と「外(がい)夷(い)」の二元構造をもたらした。当初の「中国」は狭かった。今から3000年前、中原(黄河中下流域の平原)に成立した周王朝からすれば、現在の中国本土内にあった春秋時代の国々さえ「外夷」だった。始皇帝の時代に天下を統一した秦も「当時の文献を見ると、明らかに外夷として中原の国々から下に見られていました」。中国史とは、中原の狭い「中華」が四方に拡大する過程でもあ…

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