舞台 世田谷パブリックシアター 現代能楽集Ⅹ『幸福論』 ~能「道成寺」「隅田川」より=濱田元子
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コロナ禍で揺らぐ「幸福」の概念 能楽を翻案した現代劇で問う
14世紀に観阿弥・世阿弥父子によって大成され、鎮魂の芸術ともいわれる能楽。歌舞伎に比べなじみが薄い感もあるが、戦に敗れた恨みや恋の妄執、老いや親子の情といった物語は、現代に通じる普遍的なテーマにあふれている。
その能・狂言を素材にして現代演劇を創作する「現代能楽集」シリーズ。第10弾は「幸福論」と銘打ち、気鋭の瀬戸山美咲と長田育恵という同世代の女性演劇人2人がそれぞれ謡曲をベースに戯曲を書き、瀬戸山がその2本を演出する。
「悲しさに共感できるものを選んだ」と2人。瀬戸山は山伏を恋慕するあまり大蛇となった娘を描く「道成寺」を、恵まれた環境にある青年の家庭を軸にした物語に仕立てた。能では怨念がフィーチャーされがちだが、「娘はもともと親から幸せの道を示されていて、それを信じていたけど裏切られたというのが、現代的だと思った。私たちは親だけでなく、外からもいろんな幸せの形を提示されて、そこをなぞっていけば幸せになれると漠然と…
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週刊エコノミスト
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