教養・歴史書評

歴史書の棚 鍵は自衛隊と警察の関係 50年前の事件の謎を解く=井上寿一

 今年は三島由紀夫の没後50年だった。評者は事件が起きたすぐ近くの中学校に通っていた。その日のただならぬ雰囲気は教室にも伝わってきた。帰宅すると三島ファンの父がかき集めてきた新聞の号外をみせてくれた。1970年11月25日のあの日、本当は何が起きたのだろうか。

 事件の衝撃度の強さから忘れられがちな疑問がある。西法太郎『三島由紀夫事件 50年目の証言』(新潮社、1800円)が指摘するように、なぜセキュリティー管理がもっとも厳格な場所の自衛隊の駐屯地にもかかわらず、刀剣を持ったまま検問をすり抜けて、総監の陸相を人質にとり、手数のかかる方法で自決することができたのかということである。

 本書は裁判記録の精査や関係者へのインタビューに依拠しながら、「七〇年安保」前後の時代状況における自衛隊と警察の複雑で微妙な関係に焦点を合わせて分析することでこの疑問を解く。

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