教養・歴史書評

日米関係の手がかり示す滞在記にして思索の書=井上寿一

 今年、アメリカは新しい大統領が誕生する。バイデン大統領のアメリカと日本の外交関係はどうなるのか。ここでは歴史に手がかりを求めて考える。

 最初の手がかりとなるのは、日米関係の通史の信頼できる標準的なテキストと呼ぶべき五百旗頭(いおきべ)真編『日米関係史』(有斐閣ブックス、2400円)である。刊行が2008年ではあるものの、そこでの議論は今日においても通用する。

 隣国の清朝中国がイギリスとの阿片戦争に敗れて国を開いたのと比較すれば、ペリー来航による日本の開国は幸運だった。その後の百数十年にわたる日米関係の展開は起伏に富む。国際主義と孤立主義を往復するアメリカに連動して、日本は協調外交と自主外交を往復する。アメリカが国際主義に向かう時、日本に平和と民主主義が訪れる。アメリカが孤立主義に向かう時、日本に戦争と国家主義が訪れる。その先に起きたのが日米戦争だった…

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