Jリート 投資資金の株式偏重と英国指数組み入れの追い風=関大介
Jリート(日本版不動産投資信託)の価格は、好調な株式市場とは異なり停滞感が強い状態が続いている。Jリート価格の代表的な指数である東証REIT指数の年間騰落率は16%下落となり、日経平均株価の16%上昇と比較すると対照的な状態だ。(3万円相場の投資術)
Jリートは、コロナ禍による景気後退の影響を受けやすい不動産賃貸専業だ。従って、さまざまな業種が含まれる株式市場に劣後することはやむを得ない側面がある。それでも筆者は2021年のJリート価格は、上昇する可能性が高いと考えている。
その理由として株式市場の上昇基調が続いているため、Jリートへの投資が拡大していない点が挙げられる。
例えば、Jリートと同様に実質的に不動産(主にオフィス)賃貸専業であり、株式市場に上場するダイビルと、Jリートで時価総額が最大で、オフィス系を代表する日本ビルファンド投資法人(NBF)を比較してみよう。20年12月末の予想配当(分配)利回りは、ダイビルの1・6%に対し、NBFは3・7%となっている。つまり、NBFの方が、利回り面での投資魅力がある状態だ。
1400億円の買い材料
一方で20年の価格騰落率は、ダイビルはほぼ19年末の価格水準を回復しているが、NBFは25%のマイナスの状態(図)。オフィス市場悪化懸念の影響は同様にあるはずだが、上場市場の違いだけで価格動向に差異が生じている。この点から見れば、Jリート価格の回復が遅い理由は、収益悪化懸念だけでなく株式市場に資金が偏って流入していることが原因となっていると考えられるのだ。
このように需給面でJリート市場は、株式市場に劣後する状態になっている。この点をカバーする要因として、Jリートがグローバルの株価指数の組み入れとなった点が挙げられる。
具体的には、英国の指数算出会社であるFTSE社が算出しているFTSEグローバル株価指数にJリートが20年9月から組み入れられることになった。3カ月ごとに25%ずつ比率を上げて21年6月には組み入れ比率が100%となる予定だ。
この指数に連動する運用を目指す機関投資家や投資信託は、Jリートに投資する必要が生じることになり、毎回の組み入れごとに700億円程度の買い越し需要が発生するとされている。
21年の買い越し需要は、組み入れが終わる6月までの半年で1400億円となる。つまり、指数組み入れで需給要因は、大幅に改善する余地が生じている。
もちろん株式市場の上昇基調が続けば、指数による買い越しの効果は限定的になる。指数連動の必要のない投資家がJリートを売却して、株式市場に資金を振り向ける動きが続くためだ。従って、指数組み入れによる買い越し需要がJリート価格上昇につながるには、株式市場の上値が重くなる展開が必要だ。
この条件が整えば、19年のJリート価格上昇要因であった米国債利回り(長期金利)が2%以下という状況が続いていることは追い風になるだろう。投資家が、利回りを求める状況が再来するためだ。NBFの3・7%という利回りは魅力的だろう。
(関大介・アイビー総研代表)