コロナで90年と同じく「資産バブル」が発生するワケ
2021年の不動産市場は「三極化」がますます加速する1年となりそうだ。
日米欧のあふれる緩和マネーのうち、少なくない部分が日本の不動産に向かっていることは以前に書いた。しかし、こうしたマネーはもちろん日本全国にあまねく投資されるわけではなく、東京をはじめとする大都市部に限定される。
それも小ぶりな物件は見向きもされず、あくまで大型のオフィスや商業ビル、物流施設、マンションなどへの投資が主流となる。
数千億~数兆円単位の投資予算を消化するのに、小さい物件を細々と拾ってはいられないためだ。
国内機関投資家も緩和マネーの矛先を一定程度不動産市場に振り分けるのは確実だ。
これらとは別に不動産市場を大きく下支えするのが「個人」だ。ワンルームマンションやアパートなどへの投資意欲は昨年4月からの緊急事態宣言以降、むしろ強まったとのアンケート結果もある。
また、全国的には新築・中古・マンション・一戸建てとも低調だが、これもやはり東京など大都市部では絶好調といっていい状態だ。
21年は首都圏の1都3県を対象とした緊急事態宣言でスタートしたが、日経平均株価は昨年4月の緊急事態宣言のときに大きく下落したのとは打って変わって、今回は株価の反応は薄い。
また、前回は不動産取引数が4~5割減少したものの、価格に動きはなかった。
したがって今回も取引数が減少することはあっても、投げ売りのようなことは起こらず、緊急事態宣言が明ければ取引はすっかり元に戻るどころか、滞留していた需要が噴き出すだろう。
日経平均が安泰である限り、「都心・大都市部」「駅前・駅近」「大規模」「タワー」といったワードに代表される好立地かつ高額物件は安泰だろう。一方で「立地に難のあるもの」はことごとく厳しい。
定量的なデータはないが、史上最高値を更新したビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨や、コロナ後に大幅上昇した株を売って不動産購入の原資にしたという話もちらほら聞くようになった。
つまりは「1990年型の資産バブル」が到来しているのだ。
歴史的経緯を見れば、そもそも株価は景気の実態に即して形成されると考えるほうがナンセンスで、80年代後半からは、それは教科書に書いてあるだけの古い常識になってしまった。
「上がるから買う」「買うから上がる」を繰り返す。「期待」がバロメーターとなり、天井が見えない資産バブルが発生したのが昨年で、21年はその2年目と考えるのが妥当だろう。ゴールの見えないチキンレースの始まりだ。
では「ゴール」とは何か。それはいつかやってくるであろう「金利上昇」を契機とする“国家財政破綻”だが、その時どのような資産を保有していれば身を守れるのか。資産バブルに便乗しながらも考えておく必要はあるだろう。
(本誌初出 「90年型の資産バブル」到来か/79 20210126)
■人物略歴
長嶋修 ながしま・おさむ
1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て、99年個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立