教養・歴史アートな時間

映画 春江水暖 しゅんこうすいだん 「映像の山水画」に浮かべる 激変する現代中国の姿と人の心=勝田友巳

 1988年生まれの新人監督グー・シャオガン、驚きのデビュー作。現代中国の大家族の営みを描いたこの映画、出演者はほとんどが監督の親族や知人、撮影に2年をかけたという。新人らしからぬ堂々たる演出にも舌を巻くが、背景にある大地と文化の重みと深さを画面に感じさせ、中国でなければ撮れない作品なのである。

 登場するのは、中国の水郷地帯、富陽に暮らすグー家の4兄弟とその母ユーフォン、そして4兄弟の子どもたち。長男のヨウフーは妻とレストランを営み、漁師の次男ヨウルーと妻子は住居が再開発で取り壊されるので船上で暮らす。三男ヨウジンは一人でダウン症の息子を育て、唯一独身のヨウホンは、建物の解体業だ。認知症が進んだユーフォンの介護が兄弟の懸案となり、それぞれが抱える問題を点描してゆく。

 富陽という土地が、もう一つの主役である。いにしえから富春江(ふしゅんこう)という大河と山を抱く景勝地として知られ、14世紀には山水画「富春山居図」にこの地が描かれた。一方で町の再開発が進み、建物が解体され新築マンションの販売が盛んだ。

残り765文字(全文1220文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事