EUとの投資協定で米けん制 「外交上の勝利」か「劇薬」か=岸田英明
2020年秋〜年末、大きな国際協定が二つ、数年越しの交渉の末に結実した。日中韓など15カ国が11月に署名した地域的な包括的経済連携(RCEP)と、中国と欧州連合(EU)が12月末に基本合意した投資協定だ。
中国商務部は、RCEPは21年5~6月ごろの国内批准を、投資協定は早期署名を目指す、としている。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関しても、習近平国家主席は11月、参加を積極検討する意思を示した。こうした経済連携協定に対する中国の積極姿勢には、「第14次5カ年計画(21~25年)」の主要理念である「(国内、国際の)双循環」のうち、「国際循環」を促そうという強い意思が反映されている。
意外かもしれないが、中国の専門家の間では、RCEPよりも投資協定を評価する声が強い。理由の一つに、RCEPの経済効果の小ささがある。中国は元々、東南アジア諸国連合(ASEAN)や豪州などとは自由貿易協定(FTA)を結んでおり、ある政府系シンクタンクの試算では、RCEPによる中国の国内総生産(GDP)引き上げ効果は21~25年の間でわずか0・04%。一方、現状ではEU27カ国の方が中国を除くRCE…
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週刊エコノミスト
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