最後まで出会わない二人 その時までを克明に描く=孫崎享
有料記事
×月×日
映画「男と女」を見て、その優雅さに、これはハリウッドと違うと感激してからもう50年以上も経過してしまった。そして今、アントワーヌ・ローラン著『赤いモレスキンの女』(新潮クレスト・ブックス、1800円)を読んで、そのおしゃれな描写に触れて、「この小説はフランス以外では書けないだろうな」というのが一番強い読後感である。
この本は男と女の恋の物語である。全部で174ページ。女が男を初めて実際に見るのが171ページ。二人が初めてキスをするのがその48時間後。そして最後のページで、二人はその日に「白い部屋のベッドの上で身体を重ねている」と描かれる。
残り1031文字(全文1308文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める