教養・歴史書評

枻出版の雑誌は他社に継承=永江朗

 枻(えい)出版社が2月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。同社はライフスタイルやアウトドア・スポーツなどに関する多様な雑誌・ムックの出版で知られる。東京商工リサーチによると、負債総額は約58億円。

 枻出版は1973年創業。ニッチなマーケットを狙った雑誌を数多く刊行してきた。例えば、ドゥカティ社(イタリア)のオートバイだけを扱う『ドゥカティ・マガジン』、東京都世田谷区の住民向け『世田谷ライフマガジン』、文房具に特化した『趣味の文具箱』など。過去には北欧インテリアの『北欧スタイル』(2002~13年)やカヌー専門誌『カヌーライフ』(08~12年)なども刊行していた。

 また、出版事業だけでなく、飲食店も展開していて、一時は北欧中古家具店も経営していた。

 実は筆者もかつて同社の自転車雑誌で連載していたことがあり、東京・自由が丘にある同社のカフェは打ち合わせなどでよく利用する。北欧の家具もいくつか購入したことがある。

 経営破綻の直接の原因は新型コロナウイルス禍である。いくつかのムックは発売延期を余儀なくされ、広告収入も減っていた。

 もっとも、多くの雑誌や飲食事業は他社に引き継がれる予定だ。民事再生法適用申請の直前の2月5日、登山専門誌の『ピークス』やサーフィン雑誌『ナル』、自転車雑誌『バイシクル・クラブ』などはピークス社に譲渡。ピークス社は投資会社のドリームインキュベータが設立した会社である。

 また民事再生法適用申請後、『ライダーズ・クラブ』などオートバイ雑誌3誌を実業之日本社へ、ライフスタイル誌『ライトニング』や『趣味の文具箱』などその他の雑誌と飲食店事業はヘリテージ社に、それぞれ事業譲渡すると発表があった。

 経営破綻した出版社の雑誌が事業譲渡されることは今までもあったが、これほどたくさんの雑誌が発行を継続することは珍しい。枻出版の特徴は、少数だが熱心な読者を引きつける雑誌を次々と生むことだった。その精神がピークス社や実業之日本社、ヘリテージ社に受け継がれることを望みたい。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

8月9日・16日合併号

世界経済 ’22年下期総予測第1部 世界経済&国際政治14 米国は景気後退「回避」も 世界が差し掛かる大転機 ■斎藤 信世/白鳥 達哉17 米ドル高 20年ぶり高値の「ドル指数」 特徴的な非資源国の通貨安 ■野地 慎18 米長短金利の逆転 過去6回はすべて景気後退 発生から平均で1年半後 ■市川 雅 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事