教養・歴史書評

格差社会を「趣味」で分析 難解な大著の水先案内本=本村凌二

 現代史を語るには、しばしば生々しい史料そのままを読み解く手がかりとなる理論がいる。どのような理論を指針とするかは、歴史叙述に決定的な影響をおよぼす。

 20世紀後半の卓越した社会学者ブルデューの邦訳本は藤原書店から30冊近く刊行されている。なかでも主著といえば『ディスタンクシオン』であることに異論はない。だが、一読了解とはいかず、訳者の石井洋二郎『ブルデュー「ディスタンクシオン」講義』(藤原書店、2500円)は大著を読み解きながら、ほどよい案内役をはたしてくれる。

 大著は、ひとまず「趣味と階級とのあいだには密接な関係がある」ことを解明しようとする。たとえば、同じ職業にあり、同等の文化資本にあずかっていても、名家のブルジョア家庭で育ち自然に身につけた者と努力し勉強して身につけた者とでは差異があるという。前者は古参の「文化貴族」であり、後者は新参の「成り上がり者」として区別される。

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