小説 高橋是清 第133話 寺内正毅=板谷敏彦
有料記事
(前号まで)
パリに肉薄するドイツ軍に対し、英仏両軍は反撃に転じ戦線は膠着した。是清は中立を保つ米国ウォール街のヤコブ・シフと頻繁にやりとりをしている。
大正5(1916)年10月9日、寺内正毅は第18代内閣総理大臣に就任した。
寺内は長州藩出身、山県有朋、桂太郎、児玉源太郎に次ぐ長州閥の逸材で、日露戦争中は陸軍大臣、その後就任した朝鮮総督を経ての首相就任である。寺内内閣の閣僚は山県系官僚出身者が中心で政党人を排した超然内閣であった。
この4年前の1912年には大阪に通天閣(初代)と遊園地ルナパークが開園していた。この中に当時、花街などではやっていた「ビリケンさん」が祭られて新世界の名物となっていたが、寺内の頭の形がこのビリケンに似ていた。
残り2390文字(全文2714文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める