開かれた地域主義のため思索し、歴史に学ぶ=井上寿一
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今日における日本外交の理念の一つに「自由で開かれたインド太平洋」がある。たしかに魅力的な外交理念にちがいない。しかし考えると、形容矛盾のような気がしてくる。「インド太平洋」と地域を限定する以上、「自由で開かれた」ようになるのは可能なのか。どのような国際的地域主義であっても、そのなかに含まれるか否かの線引きがあるから、排他的になることを免れることができない。加えて「アジア太平洋」ではなく、「インド太平洋」となっているのは、中国を排除しているからではないかと勘繰りたくもなる。
それでも歴史をさかのぼれば、排他的ではない国際的地域主義構想にたどり着くことができる。その一つが大平正芳の環太平洋連帯構想である。日中戦争下、中国大陸で興亜院(中国に関する政治・経済・文化等の企画・執行事務にあたる内閣の外局)に官僚として勤務していた大平は、服部龍二『増補版 大平正芳 理念と外交』(文春学藝ライブラリー、1540円)によれば、大陸から海を眺めながら、「これからは太平洋の時代だ。と…
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週刊エコノミスト
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