教養・歴史書評

開かれた地域主義のため思索し、歴史に学ぶ=井上寿一

     今日における日本外交の理念の一つに「自由で開かれたインド太平洋」がある。たしかに魅力的な外交理念にちがいない。しかし考えると、形容矛盾のような気がしてくる。「インド太平洋」と地域を限定する以上、「自由で開かれた」ようになるのは可能なのか。どのような国際的地域主義であっても、そのなかに含まれるか否かの線引きがあるから、排他的になることを免れることができない。加えて「アジア太平洋」ではなく、「インド太平洋」となっているのは、中国を排除しているからではないかと勘繰りたくもなる。

     それでも歴史をさかのぼれば、排他的ではない国際的地域主義構想にたどり着くことができる。その一つが大平正芳の環太平洋連帯構想である。日中戦争下、中国大陸で興亜院(中国に関する政治・経済・文化等の企画・執行事務にあたる内閣の外局)に官僚として勤務していた大平は、服部龍二『増補版 大平正芳 理念と外交』(文春学藝ライブラリー、1540円)によれば、大陸から海を眺めながら、「これからは太平洋の時代だ。と…

    残り475文字(全文914文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    7月27日・8月3日合併号

    変わる! 相続&登記・民法18 日本中の相続・不動産取引を変える法改正のインパクト ■種市 房子20 相続<1>土地・建物…うっかりで大損!? 登記しないと金銭的制裁も ■横山 宗祐22 <2>ますます登記が大事! やらなきゃ「法定相続分だけ」に ■横山 宗祐23 <3>遺産分割も遅れると大変! 相 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事