コロナ禍の今、なつかしの風景にひたりたい 「新版画」川瀬巴水の世界=石川健次
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美術 荒井寿一コレクション 川瀬巴水展=石川健次
どこかで見た、なつかしい景色 精緻を極め、情緒にあふれる
どこかで見た、なつかしい景色のようだと思った。図版の作品だ。そんな印象を抱く風景版画とたくさん出会った。旅行もままならない今、この会場で出かけた気分に浸るのもありかと、ひとり寡黙に作品を味わいつつ思う。
江戸時代に絶頂を誇った浮世絵版画は、明治には写真など多様化するメディアのなかで輝きを失う。だが大正から昭和前期にかけて、版元の渡辺庄三郎が提唱した「新版画」が、伝統的な木版画に新風を吹き込んだ。絵師、彫師(ほりし)、摺師(すりし)の三者分業という浮世絵版画の伝統を活かし、何より絵師を、その意を最大限尊重し、芸術性の高い木版画の創作を試みた。
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週刊エコノミスト
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