週刊エコノミスト Online2021年の経営者

通信機器用の計測器で世界大手 濱田宏一 アンリツ社長

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 神奈川県厚木市の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 神奈川県厚木市の本社で

    通信機器用の計測器で世界大手

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 通信機器の計測機器を製造しています。具体的にはどのようなものですか。

    濱田 主力のモバイル事業では、スマートフォンを携帯電話のネットワークにつないでも問題ないと判別する測定器を製造しています。「はかる」という中核技術で社会の安全を支える会社です。(2021年の経営者)

    ── 計測器で調べて何がわかるのですか。

    濱田 携帯電話は基地局を経由してつながっています。そのためにスマホが基地局につながるかどうかをテストする必要があるのですが、出荷前の端末を稼働中の基地局につないでテストすることはできません。当社の測定器には擬似的に基地局に接続する機能があり、端末がつながって仕様通りに動作するのかを試験します。

     テスト項目は数百にも上ります。例えば、海外でもつながるのか、新しいアプリを入れたら消費電力が増えてすぐに電池が切れてしまうことが起きるかどうか、アプリ開発のエンジニアは当社の測定器を使って試験をしています。

    ── 主な顧客はどこですか。

    濱田 無線通信機能などを担う半導体チップメーカーの米クアルコムや台湾メディアテックは重要な顧客です。そのほか、チップをプリント基板に乗せたモジュールメーカー、モジュールをスマホに組み込む(アップルなどの)スマホメーカー、通信網を構築する携帯電話事業者なども含まれます。

    5Gはアジアで先行

    ── 世界各地で5G(第5世代移動通信システム)が始まっていて、アンリツは「5G関連銘柄」として注目を集めました。

    濱田 コロナ禍の影響もあり地域ごとに普及の進展度合いが違います。中国を中心にアジアではコロナの影響がそれほどひどくはならず5Gが早めに進んでいます。

     5Gで使われる無線電波の周波数帯には「サブ6」と「ミリ波」と呼ばれる二つの周波数帯があり、その使い方によっても普及の度合いに差が出ています。中国やアジアでは、(ミリ波よりも)低いサブ6の周波数に十分な空きがあり5Gを導入しやすい。これに対して米国や日本では、サブ6に十分な空きがなく、ミリ波側の周波数を使う必要性があります。ところが、電波の飛ぶ範囲が短いミリ波は技術的に成熟していない面もあります。「つながらない」とか「通信スピードが出ない」という状況に陥っている中でコロナ禍が加わり5Gの普及が遅れています。米国や日本でもまずはサブ6を活用して5Gの通信網を整備する投資が2021年度の下期ごろから本格化するだろうとみています。

    ── その中でアンリツの事業戦略とは。

    濱田 3G(第3世代)や4G(第4世代)では、欧州と米国のビジネスが中心で、中国、アジアは製造がメインでした。5Gが始まってアジアで端末やネットワーク機器の開発が行われるようになり、(シャオミやOPPOなどの)中国スマホメーカーという新しい顧客を開拓して需要を取り込みました。今年度は米国や欧州の開発需要を取ることが目標です。

    ── 測定器の競合では米キーサイトやドイツのローデ・シュワルツがあります。

    濱田 4Gまでは当社とローデ・シュワルツの2社でやっていましたが、5Gでローデ社は参入が遅れ、キーサイトが5Gになって新規参入しました。ただ1社で5Gの市場をすべてカバーできるほど5G市場は小さくありません。当社とキーサイトの2社で5Gの市場を取ることになるでしょう。

    弁当の異物も検出

    ── 食品などの計測を手掛けています。

    濱田 X線や金属検出などの技術を使って食品の中に異物が混入されていないのかをチェックするシステムを手掛けています。コンビニで売られている弁当は当社のX線を使った検査器で調べています。異物の混入はないかなどをチェックして、問題なければ写真を撮影して、一個一個の安全性が追跡できるようにしています。

    ── 30年度売上高を現状の2倍近い2000億円に引き上げる目標です。どうやって達成しますか。

    濱田 スマホ以外の市場を強化する必要があり、その一つが蓄電池です。自動車に搭載され、家庭に設置されるようになりました。自動車の中古価格を決める際にも蓄電池の劣化がどの程度進んでいるのかを測って評価するニーズが出てくるでしょう。

     もう一つが医療分野です。当社では、錠剤のカプセルの中に薬がきちんと入っているのか中身をチェックする機器、眼科で視力を測る検査器用の光源のほか、がん細胞を光で照射して壊死(えし)させる半導体レーザーも製造しています。各カンパニーで少しずつ医療関連の事業に進出していて、全社で力を合わせて医療分野を強化する考えです。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q これまで仕事でピンチだったことは

    A ITバブル崩壊(2000年)後に部長になりましたが、当時は会社が非常に厳しかった頃です。その後、携帯電話の需要が広がり助かりました

    Q 「好きな本」は

    A 年間200~300冊は読みます。書店にあるハードカバーは片っ端から読みますが、ビジネス本とノウハウ本は読みません。

    Q 休日の過ごし方

    A 読書しながら音楽を聞くことです。音楽はクラシックが多いですね。


    濱田宏一(はまだ・ひろかず)

     1964年生まれ。市ケ尾高校(神奈川県)、東京電機大学工学部卒業。88年アンリツ入社。2015年4月執行役員、常務、専務を経て18年4月から現職。神奈川県出身。56歳。


    事業内容:通信機器用測定器の製造・販売など

    本社所在地:神奈川県厚木市

    創業:1895年

    資本金:191億5100万円

    従業員数:3881人(20年3月末、連結)

    業績:(21年3月期、連結)

     売上高:1059億3900万円

     営業利益:196億5100万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    12月7日号

    東証再編サバイバル18 収益性底上げへの“荒業” 日本株再起動の起爆剤に ■稲留 正英/中園 敦二24 インタビュー1 再編の狙いに迫る 山道裕己 東京証券取引所社長 「3年後には『経過措置』の方向性 プライム基準の引き上げもありうる」27 やさしく解説Q&A 東証再編/TOPIX改革/CGコード改 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事