週刊エコノミスト Online2021年の経営者

コロナ禍でも増益、国産ワクチンを開発 川村和夫 明治ホールディングス社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 中村 琢磨:東京都中央区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 中村 琢磨:東京都中央区の本社で

    コロナ禍でも増益、国産ワクチンを開発

     Interviewer=藤枝克治(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルスの感染拡大で消費が落ち込む中、2021年3月期は3・6%の増益の見通しです。要因は何ですか。

    川村 21年3月期はスタート時点で、新型コロナの感染拡大が始まっており、期初から経費を極力抑え気味にしたことが、功を奏したと思います。一方で、売上高は減収の見込みです。多くの人が新型コロナの感染を気にして、病院に行く機会が少なくなり、医薬品事業が特に影響を受けました。食品事業は、ヨーグルトなど家庭内で食べる商品は、さほど大きな影響を受けませんでしたが、お菓子関係は、旅行の制限やコンビニエンスストアでの売り上げ減で伸びませんでした。(2021年の経営者)

     明治製菓と明治乳業は09年、持ち株会社の明治ホールディングスを設立し、経営統合した。

    「ザバス」「R−1」好調

    ── 利益率の高い商品が好調だったのも、増益の一因では。

    川村 そうですね。例えば、ヨーグルトは利益率の高い商品群に入りますが、順調でした。また、プロテイン(たんぱく質)を粉末状にした商品 「ザバス」は、ドリンクタイプと合わせて、前期比20%以上の売れ行きでした。フィットネスクラブの休業などで、当初は売れ行きが良くなかったのですが、6月ぐらいから伸びました。“巣ごもり”の影響で、運動不足を気にする人が増えたことが背景にあると思います。

    ── コロナ禍で健康に気をつかう人が増えたことで、「明治プロビオヨーグルトR−1」などが売れているのでは。

    川村 「R−1」など、乳酸菌と免疫の関係を研究しているヨーグルト商品は、21年3月期もよく売れたと思います。「R−1」は冬に売り上げが伸びるのですが、21年3月期は毎月一定割合で売れました。継続的に摂取する人が増えていると思います。

    ── 牛乳事業は赤字が続いています。改善策は。

    川村 牛乳については、業界の構造的な問題があります。価格以外に差別化が難しい商品ですが、販売業者が多いうえに、プライベート・ブランド(PB)も加速し、安値合戦の状態です。しかも原料の生乳価格は、ここ10年上がり続けている。これでは赤字になるのが当たり前です。当社は02年に独自の製法で牛乳の新鮮な味わいが楽しめる「明治おいしい牛乳」を発売しました。現在はおそらく牛乳単品では、シェア20%と最も売れている牛乳だと思います。

    ── 菓子事業の中心であるチョコレートはどうですか。少子化が進んでいます。

    川村 消費が落ちているのは、チョコレート成分40%以下など、子供向け商品です。いわゆる“板チョコ”のようなチョコレート生地100%の商品は、じりじりと消費が伸びています。チョコレートは、子供よりも大人の消費に支えられている傾向ですね。日本のチョコレートの消費量は欧州の5分の1なので、まだ伸びると考えています。「チョコレート効果」という商品は、初めてチョコレートに含まれるカカオポリフェノールの量を、商品の前面に表示し、好評です。

    ワクチン国産化

    ── 医薬品事業は、グループ会社のKMバイオロジクス社が、新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいます。見通しは。

    川村 「新型コロナウイルス不活化ワクチンKD−414」は、承認申請に向けた第Ⅰ・Ⅱ相の試験が、今年3月にスタートしました。国産ワクチンでは初のⅠ・Ⅱ相試験になります。夏ごろには結果がまとまる可能性があります。その後は第Ⅲ相に移ります。

     あくまで予想ですが、早ければ22年度の後半ごろでしょうか。承認と同時に直ちに生産できるよう、生産体制の整備も同時並行的に進めています。

    ── そのワクチンの特徴は。

    川村 例えば、他社(ファイザー社など)は、メッセンジャーRNA(mRNA)など新型コロナの遺伝情報を人体に投与し、免疫を作らせますが、このワクチンは不活化ワクチンといって、感染能力を失わせた新型コロナウイルスを投与し、免疫を作らせるものです。不活化ワクチンは、すでにインフルエンザなど多くのワクチンで使われている手法で、手慣れたタイプです。このため効果や安全性などはかなり高い予見性が期待できると思います。インフルエンザワクチンの生産実績もあるので、生産面でもメリットがあります。

    ── 新型コロナは変異株が次々と見つかっています。

    川村 さまざまな変異株が出てくるということは、ワクチンは国産化した方がよいということだと思います。日本の人口は1億人以上ですから、自国で開発できる体制を整えておくことは非常に重要ではないかと考えています。

    (構成=和田肇・編集部)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A 2011年の東日本大震災です。計画停電の影響で主力の牛乳・ヨーグルト商品が生産できない事態に陥りました。

    Q 「好きな本」は

    A 歴史関係です。歴史はフィクションではないので、そこが好きです。

    Q 休日の過ごし方

    A ここ20年、ヨガをやっています。最近はヨガ教室に通えないので、オンラインでやっています。


     ■人物略歴

    川村和夫(かわむら・かずお)

     1953年生まれ、宮城県立石巻高校、早稲田大学法学部卒業、76年明治乳業(現明治)入社。2011年明治取締役、12年同社長、明治ホールディングス取締役などを経て、18年明治ホールディングス社長、20年CEO。宮城県出身、67歳。


    事業内容:食品、薬品の製造、販売を行う子会社の経営管理など

    本社所在地:東京都中央区

    設立:2009年4月

    資本金:300億円

    従業員数:1万7571人(20年3月末、連結)

    業績(20年3月期、連結)

     売上高:1兆2527億円

     営業利益:1027億円

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