週刊エコノミスト Online2021年の経営者

問屋のデジタル化で急成長 小方功 ラクーンホールディングス社長

    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都中央区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都中央区の本社で

    問屋のデジタル化で急成長

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ―― 小売店向けの卸売りサイト「スーパーデリバリー」を運営し、コロナ禍で業績が大きく伸びています。

    小方 スーパーデリバリーはインターネット上で問屋の機能を果たし、メーカーから仕入れた商品を小売店に卸しています。商品数は衣料品や雑貨を中心に約149万点。登録メーカー数は2200社以上、登録小売店は22万店以上です。(2021年の経営者)

     コロナ禍で展示会は中止になり、メーカーの営業がサンプルを持って小売店を回ることもはばかられるようになりました。一方で、感染者が少ない地方では、普通に店は開いていて、仕入れに困る状況が起きました。そこでスーパーデリバリーを利用していた小売店やメーカーはかなり助かり、新規の問い合わせも殺到しました。

    ―― どのぐらい伸びましたか。

    小方 2021年4月期は、グループ全体の売上高が前年比3割増、営業利益は同7割増の見込みです。卸売業のEC(電子商取引)化はゆっくり進んでいましたが、コロナ禍で10年分の変化が昨年1年で起こりました。

    ―― 収益構造はどのように。

    小方 従来は出店企業(メーカー)から固定費を毎月4万円、さらに取引金額の10%をもらっていました。それを昨年11月から固定費を無料にし、取引金額の15%をもらうようにしました。とりあえず試したい企業に積極的に使ってもらうためです。小売店からは月会費2000円をもらっています。

    ―― スーパーデリバリーで取引するには審査を経て会員になる必要があります。

    小方 お客である小売店の商売を邪魔しないように、卸先には消費者を入れないようにしています。小売店であることを証明する書類などを提出してもらって審査します。一方、仕入れ先はメーカーであれば大丈夫ですが、問屋は入れません。

    ―― 海外向けには国をまたぐ取引をする「越境ECサイト」も展開している。

    小方 日本の人口は減少していきますが、世界に目を向ければ人口は増え続け、無限のマーケットが広がっています。当社は各国の税関で必要とされる書類の添付など手続きを自動化しています。海外の小売店は当社のサイトを見て、商品をショッピングカートに入れて注文すれば、商品が現地に届く仕組みになっている。現在134カ国に対応しています。

    ―― メーカーの販売員がサイト上で生中継で商品を説明するライブコマースも好評です。

    小方 サイトで商品の写真だけ見てもよく分からないところを、ライブ動画で担当者が説明するのは効果的です。海外向けには中国人や韓国人のスタッフが通訳しながら中継しています。国内向けでも、これまで小売店は定休日に仕入れ先に出向いていました。しかし平日のお客の少ない時間帯にライブコマースでメーカーとやり取りできれば、定休日を減らすことができるなどのメリットがあります。

    売り掛け保証も事業の柱

    ―― スーパーデリバリーに加えて、ファイナンス事業も展開しています。

    小方 取引先の支払い遅延や、債権の未回収リスクを回避する「T&G売掛保証」、売り掛け保証をネットで完結する「ウリホ」、後払い決済を代行する「ペイド」を展開しています。

     私はもともとフィンテック(金融と情報技術の融合)に関心があったこともあり、スーパーデリバリーは仕組み上、仕入れは当社が商品をいったん買い取り、卸は当社が小売店に販売する形態になっています。このビジネスを成立させるには、取引相手の支払い能力を審査して与信枠を設定する技術が必要です。この技術を自社だけでなく、ビジネスとして提供するのがファイナンス事業の三つのサービスです。

    ―― 取引先の信用力を見極めるのは大変です。

    小方 最初は私の経験と勘だけでやっていて2000万円損しました。その後、買収した会社がリース事業に使っていたノウハウを転用し、試行錯誤しながら与信の技術を開発しました。これはわれわれ独自のノウハウで、多くの企業が関心を寄せています。

     例えば、当社が1日で行う審査を都市銀行なら1カ月近く要する。一方で、都市銀行なら20%しか通さない案件も当社なら90%通す。ただし、当社の審査で駄目と判断した会社は、高い確率で回収できなくなるので、取引しないほうがよい相手です。審査そのもののレベルが他とは違うと思います。現在はAI(人工知能)を活用し、この技術をさらに進化させています。

    ―― 今後の展開は。

    小方 現在は地方銀行との提携も進んでいて、顧客紹介などをしてもらっています。ウリホでは、日本中の中小企業の売り掛けを保証することを目標にしています。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A 1997年ごろに在庫を山ほど抱えて倒産しかけました。幸い複数の取引先の支援で倒産は回避できましたが、それ以降、猛省して流通を本気で勉強しました。

    Q 「好きな本」は

    A ジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』です。主人公がゼロからホテル王にはい上がっていく話で、心を大きく動かしてくれた本です。

    Q 休日の過ごし方

    A 今は専らゴルフと釣です。


     ■人物略歴

    小方功(おがた・いさお)

     1963年生まれ、私立札幌光星高校、北海道大学工学部卒業、88年パシフィックコンサルタンツ入社。92年に退社し、1年間中国に留学。93年起業し、健康食品や雑貨の輸入を始める。95年ラクーン設立、現在に至る。北海道出身。57歳。


    事業内容:EC事業、決済事業、保証事業

    本社所在地:東京都中央区

    設立:1995年9月

    資本金:18億5223万円(2021年1月現在)

    従業員数:189人(21年1月現在、連結)

    業績(20年4月期、連結)

     売上高:34億7700万円

     営業利益:7億600万円

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