週刊エコノミスト Online2021年の経営者

CO2で都市ガス、脱炭素の新技術 藤原正隆 大阪ガス社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 平岡 仁 大阪市の同社本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 平岡 仁 大阪市の同社本社で

    CO2で都市ガス、脱炭素の新技術

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ―― 都市ガス事業の脱炭素化に向けて、今年1月に「メタネーション」と呼ばれる技術を将来導入すると発表しました。どのようなものですか。

    藤原 水素とCO2(二酸化炭素)を触媒反応させることで、都市ガスの主原料のメタンが合成されます。これをメタネーションと呼びます。当社は、燃焼時のCO2排出量が石炭や石油に比べて大幅に少ない天然ガスを、国策に沿って普及拡大を図ってきました。ところが、政府が2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると発表したことで、従来の方法では目標に到達できなくなります。そこで、CO2の削減が難しい鉄鋼業界や化学業界などと連携し、CO2が大気中に出ないうちに回収して水素と合成してメタンを作り、都市ガス原料に使おうと考えています。現状では、製鉄所などの工場、家庭からそれぞれCO2が出ていますが、メタネーションでは工場から排出されるCO2を再利用するので、トータルの排出量が削減できます。(2021年の経営者)

    ―― 技術的には完成しているのですか。

    藤原 メタネーションの原理は100年以上前に発見されましたが、コストや大規模化に課題があって実用化されてきませんでした。当社はそこに独自の技術を盛り込んだ、新型のSOEC(固体酸化物を用いた電気分解素子)と呼ばれる装置を開発しました。メタンを合成する時の発熱を有効利用することで、メタンを取り出す効率が従来比で5~6割向上しました。すでに技術的な課題は7、8割は克服したと思います。

    ―― 実用化の時期の見通しは。

    藤原 30年には導入したいと考えています。当初は少量だと思いますが、50年ごろには相当量の、今の天然ガスと同じようにメタンを供給できると考えています。既存のガス管を利用でき、経済合理性が高いので、当社はこの技術を磨いてきました。

    家庭顧客との接点拡大

    ―― 電力自由化開始から5年、ガス自由化から4年がたちました。電気はどれくらい獲得し、ガスはどれくらい奪われましたか。

    藤原 電気は3月末時点で約150万件の顧客に供給しています。ガスは約116万件の契約が減りました。電気の顧客をこれほど獲得できるとは思っていませんでしたし、逆にガスの契約をこれだけ取られるとは予想していませんでした。関西圏は電気もガスも競合が非常に激しいですね。

    ―― 総合すると自由化の結果は経営にはマイナスですか。

    藤原 ガス事業は販売量が減っていますから収益は落ちています。逆に電気で獲得した新規顧客からの収益がガスの落ち込み分をかなり補っています。細かくは言えませんが、ガスの落ち込みを電気の収益増でかなり相殺しています。

    ―― 関西地区は価格競争が激しく消耗戦と言われましたが、一段落しましたか。

    藤原 それは、関西電力などの競合相手次第です。当社は、価格競争には自由化が始まった当初から否定的でした。16年4月に始めた「住ミカタ・サービス」では、ガス機器だけだった家庭での修理の対象を、台所など水回りやエアコン、パソコンなどにも広げており、会員数も増やしています。顧客との接点を増やすことで、顧客離れが進まないようにしています。

    ―― 首都圏では中部電力と組んで、ガスや電気を販売しています。

    藤原 ガスと電気合わせて約40万件の顧客を獲得しました。首都圏の地盤がある東急パワーサプライ(東京都世田谷区)などと組んで家庭向けの顧客を開拓しています。米アマゾンの会員向けサービス「アマゾン・プライム」の年会費を負担するなど料金メニューも工夫しています。工業用の供給では、当社出資の天然ガス火力発電所(福島県新地町)とガス製造工場(川崎市)がそれぞれ昨年運転開始したことで、今後は安定的に競争ができると思います。

    ―― 再生可能エネルギーを現在の70万キロワットから30年には500万キロワットに増やす計画です。そんなに増やせますか。

    藤原 すでに投資を決定をした分を含めると100万キロワットに近いです。これを25年までに250万キロワットに引き上げますが、半分は外部調達になるでしょう。30年時点の500万キロワットも同様に半分は外部調達になるでしょう。1カ所で大きな出力を得ることができる洋上風力に力を入れます。

    ―― 福島沖で政府が洋上風力を設置しましたが、うまくいきませんでした。

    藤原 秋田県南部の由利本荘市の沖合は洋上風力に適した遠浅の海で35%の高い稼働率が見込めるので「風力銀座」になっていますが、国が公募する事業者選定への競争は厳しくなっています。とはいえ、陸上風力とメガソーラー(大規模太陽光発電所)をパートナーと組んで地道に増やせば、手の届かない数字とは思っていません。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A 2002年ごろに営業担当で、最初のガス自由化(1995年施行)に伴い関西電力に強烈な営業攻勢を掛けられました。

    Q 「好きな本」は

    A 海外ミステリーが好きで、作家だとトマス・H・クック。筋書きが練り込まれていて、すごく面白いですね。

    Q 休日の過ごし方は

    A 仕事でゴルフか、あとは読書か会社の資料を読むかです。


     ■人物略歴

    ふじわら・まさたか

     1958年生まれ、清風南海高校卒業、京都大学工学部卒業後、82年4月大阪ガス入社。2012年執行役員、常務執行役員、副社長を経て21年1月から現職。大阪府出身。63歳


    事業内容:都市ガス事業、電力事業など

    本社所在地:大阪市

    設立:1897年4月

    資本金:1321億円

    従業員数:2万543人(2020年3月末)

    業績:(20年3月期、連結)

     売上高:1兆3686億円

     営業利益:837億円

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