教養・歴史書評

心の自由に至る道説く 奴隷出身哲学者の書

心の自由に至る道説く 奴隷出身哲学者の書=本村凌二

 ストア派の哲人皇帝マルクス・アウレリウスの『自省録』をひもとけば、皇帝が奴隷出身の哲学者エピクテトスの忠実な「弟子」であったことが分かる。エピクテトスの「覚書」をことさら愛読したらしい。

 そもそも、私塾の教師になりながら、エピクテトスは、著作を書き残さなかった。弟子の一人が言行録のごとき「語録」を作成し、やがて門下生以外にも流布して広く読まれるようになったらしい。これを抜粋した短い「要録」が編纂(へんさん)され、さらに、彼の教説に言及した後世の作家たちの「断片」が集められている。それらを一書にしたのがエピクテトス『人生談義』(岩波文庫、上巻1243円、下巻1386円)である。

 ヘレニズム期からローマ帝政期にかけて、地中海文明は頂上に昇り、人類は初めてグローバル世界を実現した。その荒波に流されず生きるにはどうすればいいのか、その心構えが模索される。その意味で、ストア哲学は21世紀の現代にも通じる訓戒を含んでいる。

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