教養・歴史闘論席

近代五輪の精神は賞味期限切れだ=片山杜秀

撮影 大西岳彦
撮影 大西岳彦

片山杜秀の闘論席

 五輪は平和の祭典という。近代五輪の祖、フランスのクーベルタン男爵は確かに、五輪は世界平和に貢献できると言った。なぜそう思ったのか。

 クーベルタンは英国かぶれだった。19世紀英国の高等教育の場ではスポーツが隆盛している。そこに目を奪われた。当時高等教育を受けているのは限られたエリート層。将来の政治家や法律家、高級官僚や大企業の幹部が、心身両面の均衡ある発展を目指し、特には団体競技に打ち込んでいる。協調心やフェアプレーの精神を養い、それが世界に冠たる大英帝国の強みに結び付いているようだ。

 他国もこのやり方を学ぶべし。そして国際試合の場を設け、各国のエリート予備軍を交流させ、友情を深めさせたらよい。彼らは各国の政財官界のリーダーになってゆくだろう。五輪は世界平和に貢献するではないか。クーベルタンの平和の話とはそういう即物的な意味なのだと思う。ジェントルマンたちの国境を超えた社交の場としての五輪である。

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