小説 高橋是清 第149話 バーデン・バーデン=板谷敏彦
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シベリア出兵の撤退問題を巡り政府と参謀本部が対立する。是清の書いた独自の政策提案書「対支経済政策概見」が物議を醸す中、大正天皇の病状が進行する。
大正10(1921)年10月27日、原敬内閣大蔵大臣の是清が「対支経済政策概見」を書き、ジャーナリストの石橋湛山がワシントン会議に臨み「一切を棄(す)つるの覚悟」という「小日本主義」的な社説を掲載したほんの少し後のことである。
フランクフルトの南約150キロ、ドイツの温泉保養地バーデン・バーデンに陸軍士官学校16期卒で30代後半の働き盛りの少佐3人が集まった。欧州大戦の終了したこの時期に欧州に派遣されている時点でまぎれもない陸軍のエリートたちである。
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