コロナ禍で立ち退きを迫られた米住宅弱者問題の議論最前線=岩田太郎
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コロナ禍の米住宅弱者問題 立ち退き猶予失効で議論=岩田太郎
新型コロナウイルス感染拡大を受けて昨年、全米各州で都市封鎖が実施された。この都市封鎖がもたらした経済減速のため、失業や収入減に見舞われて家賃が支払えなくなり、数百万人単位の借家人が強制立ち退きに直面。こうした借家人を感染拡大から守ろうと、米疾病対策センター(CDC)が昨年9月、立ち退き猶予措置を発令したが、その措置が6月末で失効する。米論壇では立ち退き問題の本質や処方箋について議論が交わされている。
米『ニューヨーク・タイムズ』紙は6月22日付の記事で、「バイデン政権は立ち退き猶予措置をさらに延長し、住居から退去させられた人たちを収容する施設の準備をする時間稼ぎをする構えだが、猶予はつなぎの救済措置に過ぎず、これ以上の延長は司法に阻止される可能性が高い」と分析した。
一方、米ニュースサイト「ハフポスト」は6月22日、「カリフォルニア州では、連邦政府から州政府に給付されたパンデミック救済の余剰資金を用いて、累積した未払い家賃の支払いを肩代わりする法案整備が進んでいる」と報じた。そして、「受給資格は、居住地域の中間収入額の80%未満の人々が対象だが、ただでさえ従前のパンデミック家賃補助の支給が遅れており、6億1900万ドル(約680億円)の申請額に対し、その8%分しか支払われていない。この調子では立ち退きの多くを防げない」との見方を示した。
また、米『ワシントン・ポスト』紙は5月6日付社説で、「大多数の家主は弁護士を雇う余裕があるが、立ち退きを求められる借家人に弁護士が付くことはまれだ。弁護人がいれば、多くのケースで退去が防げるが、今回の局面では何百万の借家人が裁判で負けることにな…
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週刊エコノミスト
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