週刊エコノミスト Online ワクチン接種で始まる 沸騰経済
相次ぐ内見、売買殺到…超多忙ニューヨークの高級不動産会社
コロナ前の生活が戻った米国ニューヨーク。オフィス勤務やレストランが再開し、経済活動が本格化した。コロナ禍で一時中断されていた高級住宅は売買が活発で値上がりした。米国ニューヨークの不動産会社サーハントで高級住宅の販売担当のクリスタ・ニッコルス氏に話を聞いた。(聞き手=岩田太郎・在米ジャーナリスト)
―― コロナ前の生活に戻りつつあるというニューヨークだが、高級住宅市場の現況は。
■ニューヨーク市全体、特にマンハッタン地区が非常に活況だ。マンハッタン地区だけで4~6月期に4633件の売買契約が締結されたが(サーハント調査)、リーマンショックの2008年前の水準と比べても記録的数字で、コロナ前の水準に戻っている。高級住宅の平均売却額も前年同期比7・3%上昇の約200万㌦(約2・2億円)だ。住宅ローン利率も上昇し始めているが歴史的に低い水準にあり、まだ市場参加は遅すぎることがないと見ていると思う。
個人に広がる安心感
―― ワクチン接種の進行の影響は。
■20年3月から6月にかけてのロックダウンなど、感染拡大の影響でこれまでは予約制の下見案内しか出来なかった。しかし、今年に入って、ニューヨーク市のワクチン接種が非常に進み、人々は活動しやすくなった。オフィスやレストランが再オープンし、ナイトライフやブロードウェイの劇場も徐々に再開している。心理的な安心感から、歴史的に低い住宅ローン金利のチャンスを逃すまいと個人の買い手が不動産取得に大挙して戻り始めている。
―― 最近、印象に残った高級住宅の取引は。
■マンハッタン地区の物件が売りに出た際、私が買い手の代理として600万㌦(6・6億円)で購入したが、買い手の個人は取得後に改装して価格をさらに上げるための投資資金も別途用意していた。マンハッタンに関して強気だ。弊社がお手伝いした高級住宅街のセントラルパーク南の物件購入は、売り手の提示価格に23%の上乗せ価格で売却された。今年はこのような状況が継続すると予想している。
取引主体は米国人
―― どのような人が高級物件を購入しているのか。
■海外から米国への入国にまだ制約がかかっており、物件の現場下見に訪れることが困難なため、ほとんどが米国内の個人だ。リモートワークなど在宅勤務の増加でよりスペースの広い物件を求める傾向にある。海外の買い手は渡航制限が緩和されれば、再び売買に戻ってくるだろう。