週刊エコノミスト Online ワクチン接種で始まる 沸騰経済
冷え込む沖縄でリゾートホテルの価格が上昇し続けるワケ
新型コロナウイルス禍で国内からの観光者数が7割以上落ち込んだ沖縄県。経済をけん引する観光業全体が打撃を受けた中で、リゾートホテルは宿泊価格の上昇が続いている。観光客の動向、観光と密接に関係する住宅市場の見通しについて、りゅうぎん総合研究所・武田智夫調査研究部長に聞いた。
―― 2020年度の沖縄県への国内観光者数は前年の約4分の1の258万人と大幅減だった。観光客数の減少によるホテルの宿泊料金への影響は。
武田 当社で調査している那覇市内のシティーホテル、那覇市以外や離島のリゾートホテルの宿泊客室単価は全体で上昇している。観光客が減る中で、シティーホテルの単価は下落が続いているが、リゾートホテルが上昇しているためだ。
リゾートホテルの客室単価の前年同月比の伸び率は20年9月以降の9カ月間、ほぼ上昇が続きマイナスは1カ月間だけだった。一方、那覇市内のシティーホテルは対照的に下落基調だ。
宿泊収入は7~8割減
―― 高級ホテルの客室単価が下がらない理由は。
武田 海外旅行に行けない代わりとして、ゆったりくつろげるコンドミニアムや、海岸線のリゾートホテルの人気が高まっている。シティホテルなど、団体客を受けているホテルは、活動自粛の影響で団体需要が落ちている。
ただ、コロナ前の19年と比べた宿泊収入はリゾートホテルもシティホテルも7~8割減で厳しい状況に変わりはない。
今後も続く観光投資
―― 訪日観光客(インバウンド)の回復はいつごろか。
武田 2019年度のデータ(沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課)では、沖縄に来る年間観光客数は約1000万人、このうち700万人が国内だ。インバウンド300万人のうち、クルーズ船と航空便が各150万人ずつだ。クルーズ船の人はホテルには宿泊しないためインバウンド消滅の影響は150万人にとどまる。インバウンドの150万人は小さくない数字だが、まずは22年にワクチン接種とコロナが落ち着いた状況が続くかどうかが鍵だ。それがうまくできれば22年は観光は十分に復活する可能性がある。
観光地として沖縄はポテンシャルが高い。マリンスポーツに加えて、世界的に優れた自然がある。今後も観光投資が継続されると思う。昨年3月には那覇空港の2本目の滑走路の供用が開始され、インフラも整備されている。
りゅうぎん総合研究所の20年12月のリポートによると、沖縄の中古マンション価格は上昇が顕著だ。りゅうぎん総合研究所によると、08年 10 月時点で 1530万円だった価格<70平方㍍換算価格>は20 年 10 月時点で3185万円と2倍に上昇した。
―― 観光関連で働く人が増えたことで、県内の住宅価格も値上がりしていたが、コロナ禍の影響はあるか。
武田 足元は伸び率が鈍化している。コロナ前はホテル建設ラッシュで、土地も含めて不動産市場は活況だった。人件費や資材費の上昇も影響し、不動産価格が押し上げられた。基本的にはこの流れは続くとみている。
分譲マンションは純粋な住まいとしての購入のほか、投資目的としての取得もみられた。投資物件としての動きも、コロナ後に再開する可能性がある。
―― 不動産市場が活発になるタイミングはいつごろか。
武田 観光や人出の動きより少し遅れて動き出すだろう。人出を秋以降とみているため、不動産市場の戻りは22年になると思う。
(聞き手=桑子かつ代・編集部)