菅氏の地元で小此木氏「造反」、横浜市長選に消えたIR=中田卓二
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首相の地元で異例の「造反」 横浜市長選前に消えたIR=中田卓二
自民党の小此木八郎衆院議員が国家公安委員長を辞任し、横浜市長選(8月8日告示、22日投開票)への立候補を表明した。それだけでも異例だが、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致取りやめを公約に掲げるという。菅義偉首相の地元で起きた「造反」の裏側には何があったのか。
5月下旬、小此木氏は菅首相と東京都内でひそかに向き合っていた。「横浜市長選に出ることにしました。IRは取りやめます」。菅氏はしばらく押し黙り、「わかった」と短く答えた──。
菅氏と近い小此木氏
まずは2人の関係に触れておきたい。
10代で秋田県から上京した菅氏は、いったん就職した後、小此木氏の父、故小此木彦三郎元通商産業相の秘書として政治の道に入った。先に衆院議員になったのは八郎氏。1996年に小選挙区制が導入されると、彦三郎氏の地盤のうち神奈川2区を菅氏が、同3区を八郎氏が引き継いだ。昨年9月の自民党総裁選では八郎氏が菅氏の選対本部長を務め、2回目の入閣を果たした。
小此木氏は菅氏を「兄貴のようなもの」と慕う。半面、古くからの支持者には「八郎さんこそ本家」という思いが今も根強い。
小此木氏が正式に立候補表明したのは6月25日。閣議後に辞表を提出すると、午後には横浜市役所で記者会見し、「(当選したら)最初の私の仕事はIR構想を取りやめることだ」と明言した。
IRは菅首相が成長戦略の柱として官房長官時代から手がけてきた政策で、横浜でも経済界の期待は大きい。小此木氏も国会で関連法に賛成票を投じた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で様相は一変。今年1月、1都3県に2回目の緊急事態宣言が出ると、反対派はもちろん、推進派の間でも「IRはもう無理だろう」という声が広がった。党県連会長として市長選を気にかけていた小此木氏は「コロナ禍のもとで本当にIRを進めていいんでしょうか」と首相に直言するようになる。
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週刊エコノミスト
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