教養・歴史書評

遺された258通もの手紙から、画家ゴヤの精神世界を読む

年代順の編集の中から画家の精神世界を知る=本村凌二

 マドリードのプラド美術館を訪れると、スペインに来たなという実感がわく。とくにゴヤの作品にはいかにもスペインの香りがある。

 この卓越した画家の精神世界をのぞきみるのに最適なのが、『ゴヤの手紙』上下(岩波文庫、各1111円)である。なによりも、年代順に編集された258通の手紙から取りあげよう。若い頃はほとんど親友のサパテール宛てである。

 1746年生まれのゴヤは、33歳のとき、国王(カルロス3世)に初めて自分の油絵を見せる栄誉にあずかり、国王にもお歴々にもたいそう気に入ってもらったという。「でも君、農園と贅沢な暮らしが欲しい。この思いは誰も僕から奪ったりできないだろう。今や、より大きな敵を持ち、もっと妬(ねた)みを抱かれるようになり始めているとしても」。

残り585文字(全文940文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事