遺された258通もの手紙から、画家ゴヤの精神世界を読む
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年代順の編集の中から画家の精神世界を知る=本村凌二
マドリードのプラド美術館を訪れると、スペインに来たなという実感がわく。とくにゴヤの作品にはいかにもスペインの香りがある。
この卓越した画家の精神世界をのぞきみるのに最適なのが、『ゴヤの手紙』上下(岩波文庫、各1111円)である。なによりも、年代順に編集された258通の手紙から取りあげよう。若い頃はほとんど親友のサパテール宛てである。
1746年生まれのゴヤは、33歳のとき、国王(カルロス3世)に初めて自分の油絵を見せる栄誉にあずかり、国王にもお歴々にもたいそう気に入ってもらったという。「でも君、農園と贅沢な暮らしが欲しい。この思いは誰も僕から奪ったりできないだろう。今や、より大きな敵を持ち、もっと妬(ねた)みを抱かれるようになり始めているとしても」。
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週刊エコノミスト
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