国際・政治論壇・論調

法人最低税率合意は「米国の勝利」 米以外の巨大企業も対象に=岩田太郎

米カリフォルニア州のグーグル本社。国際最低課税は米IT大手も標的とされる Bloomberg
米カリフォルニア州のグーグル本社。国際最低課税は米IT大手も標的とされる Bloomberg

 世界130カ国と地域が、国際的な法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけるために7月に合意した15%以上の最低税率。当初標的とされた米テック大手だけでなく、他の先進国の巨大企業も対象となったことで、「米国の勝利だ」との見方が米論壇で出ている。

 この合意についてピーターソン国際経済研究所のシメオン・デヤンコフ上席研究員は7月7日付の同研究所サイトにおける解説で、「現行の国際法人税課税のシステムは第一次世界大戦後に国際連盟で取り決められた古いもので、生産活動と本社機能がある国において税が徴収される仕組みであり、商品が販売される国には徴税権がない」と説明した。

 ロイター通信は7月1日付の記事で、「合意により、1000億ドル(約11兆1600億円)以上の利益に対する課税権が、企業が本社を構える国ではなく、実際に利益を生み出した国に移る」と伝えた。

 デヤンコフ氏はさらに、「多国籍企業は高法人税率の国で生産した部品を低法人税率の国の関連生産企業に高価格で販売することで、低法人税率の国におけるコストを引き上げ、最終製品の生産で課税対象となる利益を減らして税逃れができる。こうした手法は発見しにくく、証明も難しいため、各国の税務当局は手をこまねいてきた。また多国籍企業は、テクノロジーや知的財産など無形財を低税率の国で登録して各国の子会社に販売することで、高税率の国におけるもうけを減らして税を圧縮する」と、企業慣行の問題を指摘した。

米政府と米企業の協力

 翻って、米ニュースサイト「アクシオス」は7月1日付の記事で、「合意を受けて多国籍企業は、税を支払うか支払わないかという自由の大部分を失うことになるが…

残り638文字(全文1338文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月16日・23日合併号

今こそ知りたい! 世界経済入門第1部 マクロ、国際政治編14 長短金利逆転でも景気堅調 「ジンクス」破る米国経済■桐山友一17 米大統領選 「二つの米国」の分断深く バイデン、トランプ氏拮抗■前嶋和弘18 貿易・投資 世界の分断とブロック化で「スローバリゼーション」進行■伊藤博敏20 金融政策 物価 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事