低投票率でも勝てない自民、東京五輪成功なら国民は「忘れる」のか=平田崇浩
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低投票率でも勝てない自民 五輪成功なら国民は忘れる?=平田崇浩
東京オリンピックは新型コロナウイルス感染第5波の真っただ中で開幕を迎えた。これなら昨夏に予定通り開いた方がマシだったなどというのは後付けの話。1年延期で押し切った安倍晋三前首相はこの間にワクチンや特効薬が行き渡ると楽観していたのかもしれない。その見通しの甘さが後を継いだ菅義偉首相を苦しめている。
2年延期の声もあった中での安倍氏の決断が今年9月の自民党総裁任期をにらんだものだったというのは当時から衆目の一致するところ。五輪開催を花道に意中の後継者に首相の座を譲り渡す禅譲劇を思い描いていたのだとしたら、今となっては「花道」どころか「お花畑」の妄想と腐したくなる。
崩れ始めた安倍方程式
最悪の事態に備えるのが危機管理の基本などと諫言(かんげん)しても釈迦(しゃか)に説法。最長政権から託された五輪開催のレガシー(遺産)を政権浮揚の起爆剤とすべく、お花畑の楽観路線を突き進んできた菅内閣の支持率は発足以来最低の30%(7月17日毎日新聞・社会調査研究センター全国世論調査)まで落ち込んだ。それでも五輪が盛り上がれば内閣支持率も上向くとこれまた楽観的に考えているのだろう。
自民党の党内政局は「菅総裁続投」を前提に動いている。いま想定されているのは2パターン。菅首相の総裁任期を延長して先に衆院解散・総選挙を行う案が一つ。東京五輪後の支持率回復が芳しくなければ、10月の衆院議員任期満了ギリギリまで衆院解散を引き延ばし、ワクチン接種が行き渡るのを待つというのがもう一つ。いずれにしても、東京五輪の強行開催やワクチン供給の混乱などに対する反発が薄れるのを待つ戦術。政権に不都合なことを国民が「忘れる」のを期待しているのである。
安倍前政権下で行われた衆院選は2014年と17年の2回。前者は集団的自衛権の行使を容認する閣議決定、後者は森友・加計問題で政権への批判が高まった後だったが、14年の投票率は52・66%、17年は53・68%と戦後ワースト1、2位にまで沈み、自民党が圧勝した。不人気な政策や政権不祥事について丁寧に説明し有権者の理解を得る努力をしなくても、政治への無関心が広がり、国民の選挙離れが進めば、権力を持つ側には御の字。政権への反発を「忘れる」ことは「投票に行かない」という有権者の行動と重なる。
有権者の2人に1人しか投票しないなら、投票する人の過半数、有権者の4人に1人以上から支持を得られれば選挙に勝てる計算になる。安倍前首相の率いた自民党は右派の岩盤支持層を固め、旧民主党政権に失望した無党派層の一部からの消極的支…
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週刊エコノミスト
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