五輪成功でも政権浮揚できず!総選挙の「特効薬」は大型経済対策=及川正也
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崩れた政権浮揚のシナリオ 頼みは大型経済対策と中国政策=及川正也
東京オリンピック閉幕後、政局の焦点は今秋の衆院解散・総選挙に移る。8月初旬の段階では、(1)東京パラリンピックが閉幕する9月5日直後に臨時国会召集、(2)新型コロナウイルス対策と景気刺激策を柱とする大型経済対策策定、(3)9月中旬に衆院解散、(4)10月10日の投開票、(5)総選挙後に自民党総裁選──の日程が浮上している。
東京五輪・パラリンピックを成功させ、世の中を明るいムードにし、政権を浮揚させたうえで総選挙に臨む。そんな思惑が菅義偉首相にあったのは疑いがない。
五輪中に「緊急事態」拡大
その思惑は、すでにほころびが出ている。五輪開幕日の7月23日から3日間実施された日本経済新聞の世論調査では、菅内閣支持率は34%と、発足以来最低となった。五輪期間中には、東京都と沖縄県に適用していた緊急事態宣言を延長し、新たに埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に宣言を発令し、警戒レベルは全国的に高まった。
ほとんどの会場は無観客となったにもかかわらず、夏休みと重なって観光地などの人出は増え、都市部の繁華街もにぎわいをみせた。日本人の金メダル獲得数が過去最多を更新するという歴史的な記録を残したものの、「それが菅政権のおかげだと思う国民はいない」(自民党関係者)というのが、実情だろう。
「国民にアピールできる弾(たま)を探せ」。五輪断行の効果を期待した楽観的なシナリオが崩れるにつれて、首相周辺や自民党幹部は危機感を募らせている。
政府・与党が「特効薬」とみているのが、大型経済対策だ。長期の緊急事態宣言などで疲弊した飲食業界をはじめとするサービス業界向けの支援策が柱だが、少子高齢化対策などの社会保障政策から、大型公共事業などによる雇用対策まで、総合的な景気刺激策を視野に入れている。
自民党の二階俊博幹事長は「30兆円規模」の追加経済対策に言及。同党の下村博文政調会長は生活困窮者を対象に1人当たり10万円の給付を検討する考えを示している。総選挙前に大枠を打ち出して有権者にアピールし、選挙後の臨時国会で裏付けとなる補正予算を編成し、成立させることを公約に掲げる構えだ。
政府にとって衝撃だったのは、7月末に国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しで、日米欧の主要7カ国(G7)のうち日本だけが2021年の実質成長率の予測を下方…
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週刊エコノミスト
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