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週刊エコノミスト Online 年収1000万円の呪い

キャリアアップかいばらの道か 大人気スタートアップ転職に“覚悟”が必要なワケ

キープレイヤーズの高野秀敏社長替
キープレイヤーズの高野秀敏社長替

 新型コロナウイルス禍で、IT関連スタートアップ企業への転職が活況だ。コロナの長期化で企業の先行きが不透明な中、即戦力として自分を高く売り込もうという転職希望者が増えているという。転職支援サービスのキープレイヤーズの高野秀敏社長に聞くと、「ベンチャー企業は年収ダウンで飛び込む覚悟が必要」という厳しい現実も見えてきた。(聞き手=桑子かつ代・編集部)

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最初は「年収ダウン」でも

 コロナ禍でのDX(デジタル・トランスフォーメーション)需要の高まりが、専門技術を持つ人材の獲得に拍車を掛けている。以前は大手企業と比べてベンチャー企業は企業規模や待遇面で見劣りがしていたが、こうした差は狭まっている。背景には日本でもベンチャー企業の市場規模が急速に拡大してきたことが挙げられる。30~40代を中心に、50代以降でもビジネス実績を持つ人に対し、国内のスタートアップのベンチャー企業の採用ニーズが高い。50代以降は社外監査などの募集がある。

 以前は、転職エージェントの成功報酬はエンジニアの場合、相場感として年収の3~4割だった。コロナ以降は8割に高まっている。当社は転職斡旋をする中途採用企業の話を聞きにくる人材に、1回3万円を支払うサービスも開始した。

 スタートアップ業界への転職で一番多く質問されるのが年収だ。特に家庭、子供を持つ人は必須条件だ。しかし、給料が高い大手企業からスタートアップ企業に転職する場合、年収は良くて変わらず、むしろダウンするケースがほとんどだ。決して甘くはない。

社長の2倍の年収を支払うケースも

エンジニアに社長の2倍の年収を支払うスタートアップ企業も
エンジニアに社長の2倍の年収を支払うスタートアップ企業も

 ベンチャー企業が上場準備の段階になると、報酬は高くなる。マネージャー職は年収600万円程度、部長職800万円、執行役員800万~1000万円くらいが目安だ。一方、一般社員でも専門性を持ち、事業の中核を担う場合は、社長より高い給料をもらう人も珍しくない。過去に上場したスタートアップ企業で、社長の年収600万円に対し、1200万円をもらっていた社員がいた。エンジニアに社長の2倍を払う企業は珍しくない。

メルカリはストックオプション

 ベンチャー企業の転職紹介をする場合、企業側にストックオプション(新株予約権)の提示を提案することが多い。例えば、最近は年収650万円のエンジニアに900万円の年収とストックオプションでの採用条件を提案した。ストックオプションは、株式会社において経営者以外の役員や従業員が、自社株を一定の行使価格で購入できる権利および報酬制度だ。将来性のあるビジネスモデルを持ちながらも、まだ会社が小さく、高い待遇を出せない会社が、将来上場した時の株価上昇を見込み、社員にあらかじめ事前に決めた価格で株式を取得できる権利を与えることだ。ストックオプションを導入したベンチャー企業に、フリマアプリ運営のメルカリや医療関連オンラインのメドレーがある。

大型資金調達が増加

 ここ数年ベンチャー企業の大型資金調達が続き給与の傾向も変化している。ベンチャー企業の場合、資金調達の大半は人件費が占めている。ベンチャー企業はシード、アーリー、ミドル、レイターといった成長ステージがある。シードは事業アイデアを構築した段階、アーリーは起業、ミドルは黒字化、レイターは事業拡大路線だ。シードの段階は給与が低いが、ステージが上がるごとに年収が高くなる。

 昨今は大型資金調達が増え、その結果、社員の平均給与も上がっている。データ分析のベンチャー企業として11年に創業し、20年に東証マザーズに上場したプレイドの平均年収は887万円だ。時価総額も1000億円を超えている。上場企業よりキャッシュがあるベンチャー企業も増えている。

ベンチャー投資6000億円

 日本でのスタートアップ業界への転職はまだまだマイナーだ。しかし、スタートアップ業界への転職者数はここ数年間でかなり増えた。民間データによると、2009年に700億円だったとされるスタートアップの投資額も、今や5000憶~6000億円に上るといわれている。転職者が生き残っていくには転職後の活躍こそが大切。中長期的な視点、次の転職、次の次への視点が重要だ。あくまでも、成長する会社で力を試したいという人向けだ。

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