投資・運用不動産コンサル長嶋修の一棟両断

新築マンション販売は「超不況」=長嶋修

新築マンション販売は「超不況」/106 

 6月の首都圏新築マンション発売戸数は前年同月比25・7%増の1939戸と7カ月連続で増加した。契約率も72・5%と、好不調の目安とされる70%を上回っており、順調といっていいだろう。

 平均価格は6211万円と、ここ数年高止まりが続いている。このトレンドは近畿圏も同様だ。

 一方、年間発売戸数はこの20年で激減している。首都圏の新築マンション発売戸数は2020年に約2・7万戸といったペースであり、ピークの01年に8・9万戸だったのと比較すると、わずか30%程度の水準に過ぎない。

 さらに、販売時価総額は01年の3・6兆円から20年には1・6兆円へと減らしており、新築マンション市場全体としては、そのパイを大きく減らしてきたのが実態だ。

 つまり、新築マンション販売事業は「超不況業種」なのである。

 こうした実態は近年、不動産市場の好調を訴えるメディアの論調に慣れてきた方には意外な感じがするかもしれない。

 確かに、昨今の新築マンションは「都心」「駅前・駅近・駅直結」「大規模」「タワー」といったキーワードに象徴されるように、利便性の高い高額物件の比率が高まった。平均価格だけを見ると、12年12月の民主党から自民党への政権交代以降急上昇し、昨今は高止まりしているが、地方や郊外をはじめとする相対的に低額な物件の供給が極端に減っていることも要素としては大きいのだ。

実質的「値上げ」

 近年でもう一つ、データには表れにくい特徴がある。「実質値上げ」だ。例えば、お菓子の価格はそのまま据え置きでも内容量が200グラムから180グラムへと、いつの間にか少なくなっているの…

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週刊エコノミスト

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