法定通貨のデジタル化、基軸通貨国で割れる論壇=岩田太郎
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「デジタルドル」に米国で賛否 基軸通貨めぐる自信と不安=岩田太郎
米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する報告書を発表する予定だ。しかし、スマートフォンが現金代わりとなる「デジタルドル」発行の意義をめぐり、米経済論壇では賛否が割れている。
ラエル・ブレイナードFRB理事は7月30日の講演で、中国の中央銀行である中国人民銀行がデジタル人民元(e-CNY)の運用実験を積み重ね、欧州中央銀行(ECB)もCBDC発行に向け本腰を入れ始めたことを念頭に、「ドルは国際決済において非常に支配的な存在であるのに、他の主要国がCBDCを提供する中、米国にはないという状況は全く理解できない。今後もそうした状態を維持できるとは思えない」と述べ、デジタルドルの早期発行を訴えた。
一方、国際通貨基金(IMF)の元筆頭副専務理事であるジョンズ・ホプキンズ大学のアン・クルーガー教授は5月3日付の評論サイト「プロジェクト・シンジケート」で、「CBDCの預金口座を提供するのが中銀であれば、取引のプライバシーが保たれるかという問題がある。さらに、市場経済における信用創造の主要源である民間銀行が預金を獲得できなければ、融資の原資が不足してお金を貸せなくなる。他方、CBDCで銀行が従来通り預金を受け付けるのであれば、預金の一定割合の額を中央銀行に預け入れさせる準備預金を厳格に運用する必要がある」と述べた。
ドルの支配的地位は不動か
加えてクルーガー教授は、「ある中銀が、別の中銀が発行したCBDCを受け取るのかという問題もある。加えてドルは基軸通貨であるため、米国はドルを用いてイラ…
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週刊エコノミスト
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